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ナツメグによる中毒

2024.05.01

投稿者
クミタス

インドネシアのモルッカ諸島原産の果実であるニクズクの仮種皮は香辛料のメース、仮種皮に包まれた濃褐色の殻を取り除いた部分は香辛料のナツメグとして使用されており、ナツメグはハンバーグ、ロールキャベツやミートソース、ミートローフなどの肉料理や、クリームシチューやチーズフォンデュ、焼菓子の香り付けなどに、メースはナツメグと比較すると菓子やジャムで使用されています。
ナツメグの精油成分にはミリスチシンとエレミシンが含まれており、これらの代謝産物である MMDAや TMAにより中毒症状を発現することがあるとみられています。
症状:経口摂取後 1~8 時間から、めまい、興奮、不安、顔面紅潮、頻脈、唾液分泌低下、頻脈、胸部圧迫痛、低血圧、ショック、速く不規則な呼吸、幻覚、多幸感、四肢脱力感、口腔内乾燥、嘔吐、縮瞳、傾眠,昏睡など。
ヒト経口中毒量:ナツメグ  5~15g(茶匙9杯/日で中毒症状の報告あり)
ヒト最小致死量:ナツメグ  2個

ナツメグの過剰摂取による国内中毒例としては以下等があります。
例1:30歳男性。来院 8 時間前,肉料理の香辛料としてナツメグ 10 g を使用・摂取した。来院 5 時間前,浮遊感、動悸、四肢末梢の冷感、手の震え、発汗、口渇感が出現。自身でインターネット検索し、ナツメグ中毒の症状と合致することに気づき、大量飲水と自己誘発嘔吐を繰り返したが、改善しないため救急要請となった。来院時、不安感と口渇感を訴え、興奮気味であったが、安静にて経過観察を行い、症状は改善した。
 
特に症状出現はみられなかったものの、小児での誤食例なども見られています。
8か月男児。自宅の寝室のベッド横にある棚(高さ約 100 cm)の上に,粉砕したナツメグが入ったポプリがガラスの器に入れて置かれていた。母がトイレに立った後、児が泣いていたため見に行くと、(つかまり立ちの際、ポプリが床に落ちたためか)ポプリに入っていたナツメグ(2 cm 大)を口に入れていた。母が児の口からナツメグの 1/4 個を取り出し、その後授乳し特に普段と変わりない様子であったが、母は不安になり午前 11 時半頃に医療機関を受診。全身状態は保たれており,バイタルサインも正常であったが、経過観察目的に1泊入院した。入院後もナツメグ中毒による症状は出現せず、入院翌日に退院した。退院後2か月時点で問題なく過ごしている(出典・参照:No. 126 ナツメグ入りポプリの誤食による中毒)

過剰摂取により症状出現する可能性がありますが、海外報告からは、自覚なく中毒に至った症例では13歳未満の小児が占める割合が少なくない内容の示唆もあり、適量使用、誤食にはご留意いただくのが望ましいでしょう。
 
出典・参照:藤綱隆太朗 白川和宏 石田径子 井上聡 鳥海聡 金子翔太郎 土 屋光正 宮嶌和宏 三吉貴大 植松敬子 金尾邦生 春成学 竹村成秀 進藤健 塩島裕樹 荘司清 齋藤豊 田熊清継 ナツメグ中毒の 1 例
公益財団法人日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・ 看護師向け中毒情報─ナツメグ など

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