成人の食物アレルギーにおけるアレルゲン

成人の食物アレルギーと子供の食物アレルギーにおいてはアレルゲンにおいても少し違いが見られ、成人の食物アレルギーにおいては以下が主なアレルゲンとしても挙げられています。

・果物、野菜（PFAS：花粉と交差反応性のある果物、野菜、ラテックスフルーツ症候群）
・小麦（小麦依存性運動誘発アナフィラキシー含む）
・えび、かになどの甲殻類
・いか、たこなどの軟体動物
・魚
・アニサキス
・ツリーナッツ
・ダニ（粉もの等に混入したダニ、ダニ死がい）
・大豆（豆乳、納豆など）
・そば
・スパイス
・乳（小児期から）
・コチニール色素
・セロリ（EU圏で比較的多い）

地域差はありますが、特に成人においては17歳以下と比較するとピーナッツ、卵へのアレルギーが少なく、小麦、大豆、魚、貝へのアレルギーが多くみられると言われています（Guidelines on the management of IgE-mediated food allergies、Practical guide for allergy and immunology in Canadaなど）。

また、豆乳においてはカバノキ花粉に花粉症の症状がある方において、大豆中のタンパク質であるPR-10、Gly m 4に反応し、特にアレルギー症状を起こす可能性があると言われています。

成人になって発症する喘息について

16歳以上の喘息の患者さんにおいては、小児の時期からの喘息症状が続いている場合、小児喘息が治ったが成人になって再発する方（3～4％）以外に、20～40歳での発症が30％、40歳を超えて発症する方が半数近くと言われており、喘息は成人になってからも発症します。

小児喘息との違いとして、小児喘息はアトピー素因があることが多いのに対し、成人発症喘息はアレルゲンに対するIgE抗体反応が明確でなく即時型アレルギーでない機序の炎症により発症すると考えられる非アトピー型喘息である割合が、小児喘息よりも高いと言われています。

アトピー素因とは、アレルギー諸疾患、アトピー性皮膚炎にかかりやすい要因のことで、家族に、そして自身の既往歴に気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれかがある、またはIgE抗体を産生しやすい体質的な素因があることとされています。

尚、喘息における主な環境要因、増悪因子としては以下が挙げられます。
・主要アレルゲン：ダニ、カビ、ちり、動物の毛・フケ、花粉、食品、食品添加物など
・気温、気圧、湿度
・激しい運動、運動（運動誘発性喘息）
・性ホルモンバランス（特に女性）
・タバコの煙、PM2.5
・ストレス、疲労
・喘息用薬剤の自己判断での中断
・アスピリンなどの非ステロイド性消炎鎮痛薬（アスピリン喘息）
・職場（職業性喘息）
・風邪、インフルエンザ
・好酸球性副鼻腔炎

好酸球との関連

喘息においては好酸球が気道に湿潤しているケースも多くみられ、喘息であるかどうかの目安ともされており、喀痰中の好酸球数が多いとより重症であるとの目安も存在していますが、好中球のみが湿潤するケースなど、職業性喘息や重症喘息症例においては、好酸球が気道にほとんど見られない群も存在し（Am J Respir Crit Care Med 1999; 160: 1001-1008、Eur Respir J 2003; 22: 470-477 ほか）、喘息である場合、好酸球値が必ず高値になるとは限らない場合もあると考えられています。

好酸球性副鼻腔炎は喘息との併発症例が多くみられ、喘息患者の40～73％に慢性副鼻腔炎を合併し，逆に慢性副鼻腔炎患者の約20％は喘息に罹患するとの報告もあり、とくに成人発症喘息との関連が示唆されています。
好酸球性副鼻腔炎の患者数は約2万人とみられていますが、潜在患者数からも実際にはさらに多い可能性があり、増加傾向にあるとも言われています。
成人発症喘息の患者さんの中には、好酸球性副鼻腔炎の治療をおこなうなかで、鼻閉や後鼻漏が少なくなり喘息症状が軽快する場合もあると報告されています。
好酸球性副鼻腔炎である場合は、感染による好中球炎症を主体とした副鼻腔炎と異なり、マクロライド系の抗生物質が有効でないことがあり、適切な療法、コントロールにより軽減に期待していくところでもあります。
症状の1つとも考えられている、においがわかりにくくなるといった症状がある場合には受診し相談されるのが良いでしょう。

出典：耳鼻咽喉科・頭頸部外科　特集　最新の診療NAVI―日常診療必携　2012/4/30発行
喘息予防・管理ガイドライン２０１５　日本アレルギー学会


成人のアナフィラキシーにおける原因物質　成人のアレルギー②
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1554