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ゲノム編集と卵アレルギー

2016.05.19

投稿者
クミタス


精子や卵子の元になる始原生殖細胞のオボムコイド遺伝子をゲノム編集により欠失させて、オボムコイド遺伝子欠失ニワトリを作製することができた、との発表が2016年4月になされました。
卵アレルギーの方で、オボムコイド、オボアルブミンといった特定のタンパク質にのみアレルギー症状が出現する場合においては、オボムコイド遺伝子欠失ニワトリの産生する卵の中のオボムコイドやオボアルブミンが消失していれば、今後食品として、またワクチンとして摂取ができる可能性もあるかもしれません。

遺伝子組み換えと何が違うのか?

ゲノム編集では遺伝子の特定の箇所を切断したり、塩基の一部を置き換えたり、別の遺伝子を導入することが可能で、遺伝子組み換え技術と目的としては同じで、ゲノム編集の方が技術的に遺伝子組み換えよりもより標的の遺伝子改変をコントロールし得る点が異なります。

オボムコイド遺伝子欠失ニワトリを作成時のゲノム編集技術はクリスパー・キャス9法を適用していますが、簡便性が高い一方、標的の遺伝子箇所を切断する際に標的外の切断もおこってしまうことがあり、特異性を高める必要性も示唆されています(参考:ゲノム編集の現状について 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター研究所システム発生・再生医学研究部 乾雅史氏)。
特異性が低い方法でゲノム編集をおこなうと、目的外の機能損失、機能獲得をする可能性はあり、特定のアレルゲンタンパク質は欠失したが。風味が変化する、病害性が変わる、栄養価が変わるなどの変化もあり得るかもしれません。

ゲノム編集を施した体細胞を、0歳の赤ちゃんに移植したところ白血病から回復したという海外事例もあり、ゲノム編集は安定した技術として適用できれば、医療においても様々な期待ができ得ます。日本政府の生命倫理専門調査会は2016年4月には、ゲノム編集技術でヒト受精卵を操作することについて、基礎研究に限って認める報告書をまとめていますが、ゲノム編集を遺伝子組み換え技術の規制と同じ内容で規制するのか、規制については具体的にはなっていません。

ゲノム編集は遺伝子組み換えよりも進んだ技術としてゲノム編集作物の開発はアメリカなどでも進められていますが、規制のある遺伝子組み換え技術に対し、規制整備が整っていない段階にあるうちにゲノム編集作物の開発、ビジネスを推し進めているとみられるようなケースもあります。

オボムコイド遺伝子の欠失によるニワトリの健康に異常は認められず、野生型と同様に成長を続けている、
今後は第2世代のオボムコイド遺伝子欠失ニワトリを飼養し、オボムコイドタンパク質を含まない鶏卵の生産が可能なのか、またアレルゲン性をはじめとした卵の性状について解析を行う予定とあります。
産生する卵については実際にどうなのか、今後の動向も興味深いですね。

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