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イチョウ種子・葉による皮膚症状、ぎんなんによる中毒について

2016.10.24

投稿者
クミタス

ぎんなんはイチョウの種子の胚乳の部分を食用に、薄茶色の渋皮の部分は内種皮、その外側の食用時によく目にする殻部分は中種皮、その外側にあたる、種子の表面部分が外種皮となります。
落ちているイチョウ種子の外種皮に触れる、イチョウ葉に触れるなどにより、皮膚炎をおこしたり、ぎんなん(イチョウ種子の胚乳部)を摂取することで中毒をおこす場合があります。

イチョウ種子・葉に含まれる成分の中で症状誘発性が考えられる成分例
ギンコール酸(主に外種皮、葉)
ビロボール(主に外種皮、葉)
4-O-メチルピリドキシン(MPN) (胚乳)
 

皮膚に出現する可能性のある症状


ギンコール酸(ginkgolic acid)は主に外種皮に、葉にも外種皮の1/5程度含まれ、皮膚に接触すると水疱、膨疹、紅斑などの症状が出現することがあり、手指に成分が付いた状態でほかの部位に触れることで顔や体の複数の部位に皮膚症状が出現することもあります。
また接触してから時間を空けて症状出現することがあり、接触した皮膚からギンコール酸などの成分を吸収し、体内でアレルギー反応を起こして接触部位から離れた部位での症状出現を起こす可能性もあります。

ビロボール(bilobol)はウルシに含まれるウルシオールと交差反応性があり、ウルシに接触してアレルギー性の皮膚炎をおこす方は、ぎんなんの外種皮、葉に触れることで、皮膚にアレルギー性の浮腫性紅斑や水疱などが出現する可能性があります。

ウルシオールと相同性のある成分を含む植物例
・マンゴール、カルドールを含むマンゴー(ウルシ科マンゴー属)
・カルドール、アナカルディウム酸を含むカシューナッツ(ウルシ科カシューナットノキ属)

またサプリメント、ハーブとしてギンコール酸含有のイチョウ葉エキスを経口摂取し、体中の痒み、発疹、吐気、腹痛、下痢、めまいなどの症状が出現した等の報告が複数なされていたこともあります。現在ではギンコール酸含有濃度を低減する対応も取られており、多くは5ppm以下となっていますが、中には海外製品などで高値に含有されている製品もあります。

経口摂取する場合の中毒


ビタミンB6に構造が類似している4-O-メチルピリドキシンが体内に取り込まれると、ビタミンB6に拮抗してビタミンB6欠乏状態を引き起こし、γ-アミノ酪酸(GABA)の生成を阻害します。
γ-アミノ酪酸(GABA)は抑制性の神経伝達物質であり、欠乏すると硬直、けいれん、てんかん発作などが誘発され、致死性もあります。

重篤な症状リスクのある対象可能性
・小児(10歳未満)
過去報告数の70%程度が5歳未満との意見もあり、小児では成人に比べ4-O-メチルピリドキシンを分解する酵素が肝臓に多く存在していないため、ぎんなんを少量摂取してもビタミンB6欠乏状態を引き起こす可能性が高くなります。3歳児で6、7粒摂取での中毒例など、5歳未満では数粒程度でも症状誘発可能性があるともみられています。

・過量摂取
成人にて50粒摂取での中毒例、41歳女性で60粒摂取から4時間後に嘔気,嘔吐,下痢,めまい,両上肢の振戦,悪寒出現、6時間後救急搬送の報告例もあります。

ほかに栄養状態が悪く慢性的にビタミンB6摂取量が少ない方、抗生物質を服用中などで腸内細菌叢のバランスが悪くなっており腸内でのビタミンB6産生が低下している方も、ハイリスク者になり得ます。
(ビタミンB6を多く含む食品:マグロ、カツオ、鮭、牛レバー、鶏ささみ、ピスタチオ、ヒマワリの種、小麦胚芽、抹茶、にんにく、唐辛子など)

4-O-メチルピリドキシンは熱耐性があり、加熱調理をしても失活しにくい面がありますが、ぎんなん摂取による中毒においては、ビタミンB6の投与が有効となり得ます。ぎんなんを食べた後に異変があった場合は、速やかに受診し、早期対応のためにもぎんなんを摂取したことを伝えられるようにしましょう。


出典・参考:ぎんなんによる接触皮膚炎症候群の1例
藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院皮膚科
日本中毒情報センター ギンナン

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