1. クミタス記事
  2. クミタス記事詳細

読み物

様々なタイプのある新生児-乳児消化管アレルギー

2016.11.14

投稿者
クミタス


新生児期、乳児期に嘔吐、血便、下痢といった消化管症状や体重増加不良、不活発な状態に至り、非IgE依存性の非即時的反応が主体となる新生児-乳児消化管アレルギーは、近年顕在患者数が増えており、患者さんのうち約半数で生後、牛乳由来の粉ミルクを開始して1~7日目に症状出現が見られています。

原因となる食物は、牛乳由来粉ミルク41.8%、粉ミルク+母乳40.7%、母乳のみ15.2%、加水分解乳でも発症例があり、離乳食開始後は、米(10%)、大豆(5%)、小麦(少数)、魚(少数)、肉(少数)などでも発症例が確認されています。

新生児-乳児消化管アレルギーに特徴としては、原因物質に対してIgE反応で陽性にならないことが多い、消化管組織や末梢血で好酸球の数値が高い点が挙げられ、
・原因食物の負荷試験で症状誘発がある
・消化管組織検査で他疾患を除外して好酸球増加が見られる

のいずれかを満たしている場合、現時点では新生児-乳児消化管アレルギーの診断に至り、上記をおこなえない場合、以下を考慮することと考えられています。

・嘔吐、下痢、体重増加不良、活動性低下、腹部膨満、胆汁性嘔吐、哺乳力低下、血便(血便のみで全身状態が良好な場合は緊急性は高くないことも多い)、無呼吸発作、発熱、敗血症様症状等が見られる。
また日本における症例から病型で主に4つのグループに分類する考え方もあります。
~嘔吐と血便を起こす
~嘔吐を主体
~体重増加不良、慢性下痢を主体
~血便が主体

・検査による他疾患との鑑別
(細菌性腸炎、乳糖不耐症、消化管閉鎖、溶血性尿毒症症候群、新生児メレナ、リンパ濾胞増殖症、幽門狭窄症、早期発症クローン病、早期発症潰瘍性大腸炎、寄生虫疾患などではないこと)
・アレルギー用ミルク(カゼインを加水分解したミルク、またはアミノ酸ミルク)へ変更し症状が消失するか
・1か月ごとに体重増加の確認
・確定診断および離乳食開始のための負荷試験

成長障害や重篤な合併症を起こさなければ、1歳までに52%、2歳までに88%、3歳までに94%が寛解していたと報告されています。

他の症状、他のアレルギー疾患が続発する場合


新生児-乳児消化管アレルギーでは、血液検査での特異的IgEで陽性とならないことが多く、陽性でないことでアレルギーでないとされ、原因食物を摂取し症状再燃することがあるため、特異的IgEのみで診断されるものではないという理解でいる必要があるものでもあります。

症状出現例としては、完全母乳栄養後、牛乳を多く飲むようになって発症する例等もありますが、生後1~7日目に症状出現する場合においては、感作成立までに10日間ほど要すると考えられていることから、胎児でいる間に感作している可能性も考えられています。ただ、妊娠期のママの摂取量の違いに関わらず児において発症が見られているとの意見もあります。

アトピー性皮膚炎や気管支喘息が続発、併発したり、IgE依存性のアレルギーが続発、併発する場合もあり、即時型との混合タイプでは湿疹を起こすとも考えられています。
また、生後1か月後、2か月後の発症においては、CRP値上昇を伴う方も見られるとの報告もあります。

新生児-乳児消化管アレルギーにおいては、10%近くで腸閉塞や成長障害などを起こす場合もある重症例となるとの示唆もありますが、全体的には微量でのアナフィラキシーや重篤な症状出現リスクは即時型食物アレルギーと比較すると低く、原因食物の摂取中断により症状消失する可能性が高い傾向とも考えられています。

新生児-乳児消化管アレルギー(新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎)は平成27年1月1日から医療費助成対象疾病(指定難病)となっています。粉ミルク摂取開始後に異変がある場合は、受診し新生児-乳児消化管アレルギーの可能性を視野に早期から対応が始められるのが望ましいでしょう。


出典:2016/1/12 新生児-乳児消化管アレルギー(新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎)診断治療指針
牛乳摂取後に発熱を来たした消化管アレルギーの合併が疑われた2例
新生児・乳児消化管アレルギー患者におけるCRP上昇と発症時期との関係ー好酸球との比較ー

    {genreName}

      {topics}