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追熟と鮮度保持~エチレン

2017.01.14

投稿者
クミタス

早く熟させたいときは


果物、野菜の鮮度を保つ上で影響要因となるのが植物ホルモンであるエチレン(ガス)で、収穫後、家庭で保管時の果物、野菜においてもエチレン(ガス)は発生します。作物中のエチレン濃度としては、パッションフルーツ(466~530ppm)、西洋ナシ(80ppm)、アボカド(28.9~74.2ppm)、リンゴ(25~2500ppm)、ネクタリン(3.6~602ppm)、トマト(3.6~29.8ppm)等に多く含まれ、メロン、柿、桃、ヤマイモ等も比較的多く含まれるものに挙げられます。
追熟することを想定し早く収穫されまだ熟していないメロン、キウイフルーツ、西洋梨、バナナ、すもも、アボカド、マンゴー、パパイヤ、チェリモヤ、パッションフルーツ、ドリアンと同じ袋の中で保管すると、追熟が進みやすくなります。ジャムを作りたいときや早く熟させたいときには、家庭で試せる策でもあります。

長く鮮度を保ちたいときは


エチレンの影響を受けやすい果物、野菜としては、すいか、カリフラワー、キャベツ、きゅうり、熟した状態で緑のトマト、にんじん、ねぎ、パセリ、ブロッコリー、ほうれん草、レタス等があり、エチレンを多く生成する果物、野菜とエチレンの影響を受けやすい果物、野菜を一緒に冷蔵庫保管をする場合は、分けて袋に入れて保管する方が、鮮度を保ちやすくなります。
また野菜をカットして保存すると、十数時間~数十時間内に切断障害からエチレン生成が誘導され、傷みも早くなります。カットしてからは早めに消費できるのが良いでしょう。

また、花の中でも特にカーネーション、ほかに宿根カスミソウ、スイートピー、デルフィニウム、デンドロビウム、バンダなどではエチレンの影響を受けやすいとの試験結果もあり、ナデシコ科の花は比較的エチレンの影響を受けやすいとも言われています。
切り花を長持ちさせる方法は花によっても様々にあり、切り花において糖はつぼみ開花促進など栄養分となりますが、花弁などの糖濃度が低下するとエチレン生成量が増えると見られており、エチレン生成量の多い、影響を受けやすい花においては、エチレンを生成しやすい果物を多く近くに置かないようにしたり、エチレンを発生する燃焼中の石油ストーブの近くに置かないことも1つの策となり得、抗菌剤使用以外に銀イオンやスクロース、グルコース、フルクトースなどの糖やエタノールを花瓶の水に入れることでも、エチレン生成を抑制し、花もちが少し良くなるとも考えられています。

じゃがいもの萌芽抑制、特定農薬としての使用


エチレンはじゃがいもの芽の萌芽を抑制するはたらきがあると言われており、カナダで 2001年にじゃがいもの萌芽抑制剤として、イギリスでは2006年に果実の追熟用並びにタマネギ及びじゃがいもの萌芽抑制剤として、農薬登録がなされています。
エチレンは果物、野菜を摂取することによっても体内に取り込まれ、また不飽和脂肪酸の脂質過酸化、メチオニンの酸化、ヘモグロビン中のヘミンの酸化、腸内細菌の代謝などによりヒトの体内から検出されることがあります。また、麻酔としても使用されていたことがあり、人体への影響面も検討された結果、エチレンは2014年3月より特定農薬(その原材料に照らし農作 物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣及び環境大臣が指定する農薬)として指定されています。


出典・参考:
野菜の最適貯蔵条件 農研機構
https://www.naro.affrc.go.jp/vegetea/joho/vegetables/cultivation/04/index.html
切り花における収穫後の生理機構に関する研究の現状と展望
カット野菜の品質特性 と微生物的安全性
特定農薬※評価書 エチレン 

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