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セリアック病とウイルスとの関連可能性

2017.04.10

投稿者
クミタス


セリアック病は、グルテン摂取によりグルテン感受性T細胞が活性化し、主に小腸に慢性炎症を生じる自己免疫疾患で、遺伝的感受性のある方での発症が考えられていますが、遺伝的感受性のある方でも発症していない方がいるなど、環境因子の関与可能性があり、最近ではセリアック病患者さんとウイルス感染との関係に関する報告が見られています。

レオウイルス(哺乳類オルソレオウイルス)は多くの成人に無自覚にも感染歴があり、T1 Lang (T1L)、T2 Jones (T2J)、T3 Dearing (T3D)、T3 Abeny (T3A)の血清型が同定されており、T1L、T3Dはヒトに感染することが分かっています。

そのうち小腸に感染することの少ないT3Dは腫瘍溶解性ウイルス(がん治療薬。レオライシン)としての試験もなされていますが、小腸に届くように改変したT3Dと小腸に感染することの多いT1Lマウスでの試験では、T1L感染により、レオウイルスに対する抗体レベルが高くなり、その状態でグルテンまたはオボアルブミンなどを含む食事をマウスに与えると炎症性免疫応答を引き起こしたことから、T1Lに感染した状態で(特に難消化性の)グルテンなどの食物抗原が取り込まれると、炎症性免疫応答を誘発し食物抗原に対する免疫寛容を破たんする可能性が考えられ、食物抗原の存在下でT1Lなどのウイルスに感染していることで、腸内の免疫ホメオスタシスを破壊し、セリアック病発症において遺伝的に素因がある方の発症誘引の1つとなる可能性を示唆しています。またヒトにおいてもセリアック病患者さんにおいては、抗レオウイルス抗体が疾患のない方よりも有意に高いことを確認しており、抗体レベルと炎症応答との相関についてはより検討が必要としています(Reovirus infection triggers inflammatory responses to dietary antigens and development of celiac disease)。

また、他の報告では難治性セリアック病患者さんの17例中12例(70.5%)の生検標本でEBウイルス陽性であり、EBウイルスは炎症細胞および腸の細胞で検出されており、難治性セリアック病、腸管症関連T細胞リンパ腫に関与するかどうかを述べるにはより検討が必要、としています(Detection of Active Epstein?Barr Virus Infection in Duodenal Mucosa of Patients With Refractory Celiac Disease)。

特に免疫システムが成熟途上の生後1年内でウイルスに感染することは、将来的に疾患発症の因子となる可能性があり、レオウイルスなどのウイルス感染がセリアック病発症の誘発因子となることが確かなものとなる場合、今後ワクチンなどでの予防の可能性も考えられるかもしれません。

出典・参考:
Reovirus infection triggers inflammatory responses to dietary antigens and development of celiac disease
Detection of Active Epstein Barr Virus Infection in Duodenal Mucosa of Patients With Refractory Celiac Disease

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