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ヨードホルムガーゼによる中毒

2024.12.26

投稿者
クミタス

ヨードホルムガーゼは、傷のある部位の浸出液にヨードホルムが溶解して遊離ヨウ素となることで殺菌効果があり、創傷の感染制御の目的で使用されることがあります。
ヨードによる中毒としては以下などが挙げられており、
精神神経系:興奮、せん妄、不穏、見当識障害、記憶障害、抑うつ、昏睡、失神、傾眠、不眠(睡眠障害)等
・消化器:食欲不振等
・その他:頭痛、全身倦怠感、頻脈等
比較的広範囲な傷のある部位にヨードホルムガーゼを連日使用していて、ヨウ素中毒に至る場合があります。

・69歳男性。左下腿の壊死性筋膜炎に対するデブリードマン後にヨードホルムガーゼ(30×60 cm)を15日間使用して、意識障害と発熱を生じ,使用中止後に改善した。
・56歳男性。右側腹部、鼠径部、大腿部の壊死性筋膜炎に対するデブリードマン後にヨードホルムガーゼ(30×110 cm)を17日間使用して、意識障害と発熱、頻脈を生じ、使用中止後に改善した。
尿中ヨウ素値はいずれも80×104 μg/l以上の高値であり、ヨードホルムガーゼによる中毒と考えられた。当院でヨードホルムガーゼ使用例の尿中ヨウ素値を今回の中毒症例も含めて6例測定したが、非中毒症例の尿中ヨウ素値は最高で11×104 μg/lであった。中毒症例の皮膚欠損はいずれも10%以上と広範囲であり、非中毒症例の皮膚欠損は1〜5%と狭かった(出典・参照:池田宏器, 西純平, 井上卓也, 杉田和成 佐賀大学医学部内科学講座皮膚科 ヨードホルムガーゼによる中毒の2例—当科経験症例のまとめ)。
 
上記報告では、ヨードホルムガーゼの多量、長期間の使用は中毒のリスクが高いため、皮膚欠損部に合わせてカットするなどの必要最小限の使用とすることが有用、と示唆しています。「ヨードホルムガーゼ使用中に生じた意識障害では、本薬剤の影響を鑑別にあげ中止を検討する必要がある」と示唆する報告もあります。また他のケースなども掲載したいと思います。

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