Author クミタスさん
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2020.03.23
2008年よりアトピー性皮膚炎の病勢を示す指標として、血清TARC値の測定は保険適用となっており、血清TARC値が高値時には、アトピー性皮膚炎の重症度が高い傾向がありますが、血清TARC値はアトピー性皮膚炎以外が原因でも上昇する場合があります
血清TARC値の上昇~アトピー性皮膚炎以外が原因である可能性も
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/3404
腸管に炎症がある疾患で、血清TARC値の上昇が見られる傾向についての示唆もされていますが、潰瘍性大腸炎の影響で血清TARC値が高値となった、潰瘍性大腸炎合併アトピー性皮膚炎の成人の例も見られています。
TARC (thymus and activation-regulated chemokine) は、白血球走化作用を持つケモカインの一種で、樹状細胞、リンパ球、血管内皮細胞、繊維芽細胞などから産生されますが、過剰産生されるとTh2細胞を病変局所に引き寄せ、IgE抗体の産生や好酸球の活性化が起こり、 炎症反応を引き起こすとみられ、
アトピー性皮膚炎を発症していない、または寛解状態でも、TARC 値が異常高値を示す場合、体内に Th2炎症が存在する可能性があると考えられています。
新生児、乳児期早期には疾患を発症していなくてもTARC 値が高値を示すことがありますが、新生児–乳児消化管アレルギーを発症していた児において、血清TARC値が高い状態にある場合があります。
症例1:日齢14の女児。哺乳不良、体重減少。末梢血好酸球増多(5820/μL)、血清TARC高値(4730pg/mL)、牛乳特異的IgE陽性(1.53UA/mL)であった。加水分解乳、乳製品を除去した母乳とし症状は改善した。1カ月半後、牛乳特異的IgEは陰性、血清TARC値(198pg/mL)も基準値まで改善した。
症例2:生後3カ月の女児。ミルク後の嘔吐を主訴に受診。牛乳特異的IgE陰性であったが、血清TARCは異常高値(25200pg/mL)であった。加水分解乳および乳製品を除去した母乳とし症状は改善した. 3カ月後、牛乳特異的IgE(0.42UA/mL)陽性、血清TARC値(1250pg/mL)は基準値まで改善した。
症例3:日齢21の女児。ミルク後に嘔吐。末梢血好酸球増多(2923/μL)、血清TARC異常高値(49100pg/mL)、牛乳特異的IgE陽性(0.47UA/mL)であった。栄養を加水分解乳および乳製品を除去した母乳とし症状は改善した。2週間後、牛乳特異的IgEは陰性、血清TARC値(2210pg/mL)も改善傾向となった。
血清TARC値の基準値は年齢によっても異なり、アトピー性皮膚炎の皮疹が改善すると、血清TARC値は比較的すみやかに低下する傾向がありますが、アトピー性皮膚炎以外の原因で血清TARC値が上昇する場合もあります。血清TARCの動向は、一部の新生児-乳児消化管アレルギーの病態に関連していると見られていますが、また情報をアップデートしていきたいと思います。
出典・参照:皮疹の重症度と解離してTARC異常高値を認めた潰瘍性大腸炎合併アトピー性皮膚炎の一例
血清TARCの高値を認めた新生児-乳児消化管アレルギーの3例
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