1. クミタス記事
  2. クミタス記事詳細

読み物

仮性絞扼症のケース

2025.08.03

投稿者
クミタス

仮性絞扼症(かせいこうやくしょう)では、ひもや毛髪、輪ゴム、絆創膏、指輪などにより、狭い範囲に持続的に圧力がかかることで、皮膚や軟部組織の壊死を伴いながら圧迫している物体が埋没していき、阻血による壊死や、二次感染による骨髄炎, ガス壊疽や敗血症などを生じることがあります。
 
・止血目的に使用した輪ゴムを放置し小趾の壊死
75歳男性。糖尿病で通院中、自分で足の爪切り時に誤って右小趾先を受傷し、止血目的で使用したガーゼを輪ゴムで留めていた。数日後、同側の足背に発赤腫脹が生じ、近医で抗生剤の点滴を受け当科へ紹介された。入院の上、抗生剤投与を継続したところ、右小趾は末節骨以遠が壊死しており、DIP関節に輪ゴムが食い込んでいた。自己処置時に止血目的に使用した輪ゴムを放置していたことが原因であった(出典・参照:藤岡愛,坂本敬,山本雅章 輪ゴムによる小趾仮性絞扼症の1例)。
 
・潰瘍最深部に輪ゴムが見つかった上腕仮性絞扼症
84歳女性。当科初診2年前より左上腕の痂皮を自覚。家人に同部位の潰瘍を指摘され近医皮膚科を受診。悪性腫瘍の可能性も疑われ、当科を紹介受診。当科初診時、発熱と左上腕の悪臭を伴う全周性の皮膚潰瘍を認めた。潰瘍内を鑷子で検索したところ、潰瘍最深部に白色索状物を認めた。摘出すると、3本の輪ゴムであった。抗菌薬投与、潰瘍内の洗浄およびスクロードパスタ®塗布により速やかに解熱し、潰瘍も徐々に上皮化して瘢痕治癒した(出典・参照:片山新介, 桑折信重, 吉田諭, 西原克彦, 八束和樹, 武藤潤, 渡部裕子, 白石研, 藤澤康弘 愛媛大学大学院医学系研究科皮膚科学 わたなべ皮ふ科形成外科 輪ゴムによる上腕仮性絞扼症の1例)。
 
・救急絆創膏による指仮性絞扼症
22歳男性。主訴:左中指の皮膚の変色、腫脹。 既往歴・家族歴:特記すべきことなし。現病歴:調理場で仕事中に割れたグラスにより左中指指尖部の切創を受傷した。職場の同僚が止血目的に、市販の救急絆創膏で圧迫固定し、そのまま3日間放置していた。指尖部の腫脹が憎悪し、皮膚が紫に変色してきたため、絆創膏をはずし当院を受診した。 初診時現症:左中指の遠位指節間皮線より末梢は暗紫色で、水疱を形成していた。疼痛は認めず、指尖部の知覚は消失していた。水疱を除去したが、膿は認めなかった。 画像所見(単純X線像):骨折、異物はなく、ガス像、骨髄炎所見は認めなかった。  臨床検査所見:白血球数 7,700/μl,CRP 3.2mg/dl と軽度炎症所見を認めた。絆創膏で3日間強く圧迫固定していたという経過と、特記すべき既往歴はないことから、絆創膏による中指の仮性絞扼症と診断された(出典・参照:山崎和紀,江口智明 救急絆創膏による指仮性絞扼症の1例)。

糖尿病性神経障害がある場合、絞扼による痛みを感じることがなく、輪ゴムで固定したことを失念し、輪ゴムによる絞扼から血流障害が生じ、壊死に至る場合や、認知症のある方でいつから絞扼されていたか分からない症例なども見られています。また、家庭や職場での創傷処置においても、包帯や救急絆創膏などにより仮性絞扼症が起こりうることにもご留意頂ければと思います。

    {genreName}

      {topics}