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ステロイド剤との混合において

2018.02.07

投稿者
クミタス

塗り薬においては、薬効成分の吸収を良くしたり、塗りやすくする、また皮膚病変部の保護目的でも基剤が含まれます。
基剤が油性成分のみの油脂性基剤、水性成分のみの水溶性基剤、油性成分と水性成分を含む乳剤性基剤(水中油型(O/W型)、油中水型(W/O型)のクリーム剤や、水中油型(O/W型)の乳剤性ローション剤など)、ゲル基剤などがありますが、基剤によっても皮膚へのなじみやすさに違いがあり、そして基剤と薬効成分の親和性とのバランスで、薬効成分の皮膚吸収性が変わってくることがあります。
また、油脂性軟膏剤、水溶性軟膏剤においては、薬効成分が均一に分散している一方で、クリーム剤や乳剤性ローション剤では、基剤中に均一に分散していないものもあり、分散状態も吸収性に影響し、また他剤と混合することにより影響を及ぼすことがあります。

皮膚透過性


ステロイド外用剤と保湿剤を使用する機会も多いかと思いますが、ステロイド外用剤のリドメックス軟膏と、尿素外用剤パスタロンソフト(W/O型)、ヒルドイドソフト(W/O型)のそれぞれを混合した後のステロイドの皮膚透過比では、
リドメックス軟膏のみを1とすると
リドメックス軟膏とパスタロンソフトの混合は5倍近く
リドメックス軟膏とヒルドイドソフトの混合は2.5倍ほど
高くなっており

ステロイド外用剤がアンテベート軟膏の場合は
アンテベート軟膏のみを1とすると
アンテベート軟膏とパスタロンソフトの混合は2倍近く
アンテベート軟膏とヒルドイドソフトの混合は1.5倍ほど
高く

ステロイド外用剤がマイザー軟膏の場合は
マイザー軟膏のみを1とすると
マイザー軟膏とパスタロンソフトの混合は2.5倍近く
マイザー軟膏とヒルドイドソフトの混合は2.4倍ほど
となっているとの結果も見られています。

ステロイド軟膏は乳剤性基剤(W/O型)との混合においては、比較的安定していますが、ステロイドの皮膚透過量が増加し、またステロイド軟膏と同じ濃度の尿素製剤との混合で皮膚透過量が高まるとみられています。
また、ステロイド軟膏とワセリンの混合においては、ワセリンなしの状態と皮膚透過性にあまり変わりはなく、これはステロイド軟膏をワセリンで希釈しても、ステロイドの薬効成分が結晶が残り飽和した状態ではステロイドの濃度が変わらないため、と考えられています。
保湿剤と混合する場合、ステロイド剤が希釈される印象を受けますが、保湿剤との組み合わせによっては、ステロイド剤の吸収性がより高まることになり、副作用の影響が出やすくなることもありますので、留意が必要です。

含量


酸性で安定するステロイド外用剤と、アルカリ性で安定する外用剤とを併用すると、混合しpHが変化し、加水分解をおこしてステロイドの含量が低下し、効果の減弱が起こりやすくなります。
特にステロイドの構造にモノエステルタイプの17位にエステル基を持ち、21位にOH基を持つ、ロコイド軟膏、ボアラ軟膏、リンデロンV軟膏、リンデロンVG軟膏などでは、ステロイドの含量低下が見られ、以下組み合わせでステロイド含量が低減すると見られています(以下一例)。

ボアラ軟膏
亜鉛化軟膏 2週後に10.6%減
ユベラ軟膏 2週後に82.2%減

リンデロンV軟膏
ケラチナミン軟膏 2週後に38.8%減
パスタロンソフト 2週後に45.2%減
ユベラ軟膏 2週後に65.4%減

ロコイド軟膏
ケラチナミン軟膏 2週後に39.3%減
パスタロンソフト 2週後に60.3%減
ユベラ軟膏 2週後に75.4%減

上記以外にもロコイド軟膏とヒルドイドクリームの混合で2週後に11%~14%減との報告もあります。時間経過とともにステロイドの含量が少なくなり、効きが悪くなってくることがありますので、含量が減りやすい組み合わせの薬剤は特に、処方されて数週間以上を経て使用するといった使い方は避けるのが望ましいでしょう。

分離、液化


ステロイド剤に乳剤性基剤で油中水型基剤のO/W型保湿剤を混合した場合、乳化が破壊されやすくなります。大きく破壊されると皮膚透過性が低減し、ステロイドの効果が減弱する場合や、水が分離した場合は細菌汚染することもありますのでご留意ください。
 

出典・参照:マルホ 基礎からわかる外用剤
軟膏・軟膏・クリーム配合変化ハンドブック 第2版 じほう
皮膚外用剤のための Q&A 南山堂
ステロイド軟膏剤の混合による臨床効果と副作用への影響の評価.医療薬学 29

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