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スエヒロタケによるアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎

2025.09.28

投稿者
クミタス

アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎 (AFRS) は、 環境中に浮遊した真菌が気道内に定着、増殖することでアレルギー反応を起こし慢性副鼻腔炎の病態が形成される疾患で、副鼻腔真菌症の原因真菌には、アスペルギルス、ムーコル、カンジダ、カーブラリア(curvularia)、ドレッシラ(Drechslera)、ビポラリス(Bipolaris)、アルテルナリア、クラドスポリウムなど、住居内に存在することのある真菌も該当し、真菌に属するキノコのスエヒロタケも原因となることがあります。
 
36歳女性。主訴:鼻閉.既往歴:気管支喘息(25歳診断)、帝王切開。服薬歴:ベポタスチンベジル酸塩、プランルカスト、ブデソニドホルモテロールフマル酸塩水和物。現病歴:数か月前からの右鼻閉と頬部痛を主訴に前医を受診し、右側の中鼻道入口付近の粘膜が浮腫状であり、嗅裂にポリープを認めたため、右側慢性副鼻腔炎と診断された。前医で定期的に副鼻腔自然孔開大処置や鼻腔ネブライザーを行うとともに鼻噴霧用ステロイド薬を使用したが改善に乏しく、治療抵抗性の一側性の副鼻腔炎であり、副鼻腔腫瘍、副鼻腔真菌症、歯性副鼻腔炎との鑑別も必要であり、紹介受診した。
来院時現症:〔内視鏡所見〕右嗅裂に鼻茸と少量の漿液性鼻汁を認めた。
経過:保存的治療に抵抗を示す右優位の副鼻腔炎、真菌に対するIgE値が高いこと、好酸球性ムチンを示唆する特徴的な画像所見からアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎が疑われ、全身麻酔下で内視鏡下鼻副鼻腔手術IV型を施行。右上顎洞・篩骨洞粘膜は浮腫様であり、右上顎洞内には白色半透明のムチン様物質が充満していた。細胞診では糸状菌、好酸球の浸潤、シャルコーライデン結晶を認め、病理組織検査では真菌の組織浸潤を認めなかった。アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎の診断基準をすべて満たしたが、培養検査および病理組織検査では真菌種の同定には至らなかったため上顎洞内容物から真菌のrDNAを抽出し、18SrDNA-ITS1-5.8SrDNA26S rDNA領域のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、得られた産物のDNA配列をNCBIGeneBank内のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)を用いて分析したところ、スエヒロタケと一致した。またBuzinaらのスエヒロタケ特異PCRでも陽性となった。同時に術前胸部CTにて右下肺野に粒状影を認めており、同部位から採取したBALF・TBLB検体からもPCR検査を行ったが、これらからスエヒロタケのDNAは検出されなかった。スエヒロタケに対するI型アレルギーの存在証明のため、血清スエヒロタケ特異的IgE抗体値測定を千葉大学真菌医学研究センターに依頼したところ、0.494UA/mLと強陽性であった。以上からスエヒロタケによるアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎と診断された(出典・参照:八木詩央 瀬尾友佳子 山村幸江 菊池賢 東京女子医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野東京女子医科大学総合感染症・感染制御部感染症科 スエヒロタケによるアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎の1例)。

スエヒロタケによるアレルギー性気管支肺真菌症 (ABPM)においては、中年以上の女性に多く、 再燃頻度が高いという特徴があるとの示唆もあり、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎 (AFRS) においても類似した臨床的特徴がみられる可能性も示唆されています。喘息症状がなく粘液栓の除去にて5年間増悪のないスエヒロタケによるアレルギー性気管支肺真菌症の報告例などもありますが、今後も症例や特徴、傾向など追記したいと思います。

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