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2015.10.31
ネコと接触をして、ネコのいる・いた空間で、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼のかゆみ、涙、頭痛、咳、気道の閉塞感、皮膚の発疹やじんましんといったアレルギー症状のある方も少なくはありません。症状が強く出ない場合もありますが、種類、環境によっても異なるのでしょうか?
フケ(皮膚)、唾液、尿中に含まれるネコのアレルゲンとしては以下等が挙げられています
・Fel d 1(ウテログロビン様タンパク質)
・Fel d 4(リポカリン)
・Fel d 2(血清アルブミン)
・Fel d 3(シスタチン、システインプロテアーゼ阻害剤)
・Fel d 5、Fel d 6、Fel d 7 など
ほかに、ネコに寄生するカビ、ダニもアレルギー症状を誘発する原因になり得、Fel d 1などこれらは空気中に舞い上がり浮遊もします。
十分に評価されている段階ではありませんが、あくまでFel d 1などの産生量に違いが見られるかもしれない観点、意見として以下等があります。
・雌よりも雄の方がFel d 1の産生量が多く、雄も去勢するとFel d 1の産生量が少なくなる
Jalil-Colome,J.,Dornelas de Andrade,A.,Birnbaum,J.et al, :Sex difference in Fel d 1 allergen production. J.Allergy Clin Immunol. 1996:soreikademo 98:165-168
・子ネコよりも成ネコの方がFel d 1の産生量が多い
・個体差は当然ありますが、Fel d 1の産生量が少ないかもしれない種のネコとして、サイベリアン、バリニーズ、コーニッシュレックス、スフィンクスなどを挙げる意見もあります。
アレルギー性疾患の既往歴と動物へのアレルギー症状との関係について、成人においてはアレルギー性鼻炎の既往歴がある方で動物にアレルギー症状のある方は21.9%(既往歴の無い方は7.4%)、ぜんそくの既往歴のある方でアレルギー症状のある方は3.8%(既往歴の無い方は1.1%)、じんましんの既往のある方で12%(既往歴の無い方は7.9%)、皮膚かぶれのある方で11.9%(既往歴の無い方は7%)との調査結果もあり、もともとアレルギー性鼻炎やぜんそく、じんましん、皮膚かぶれなどの症状のある方は無い方に比べると、2~3倍、動物へのアレルギー症状の発症率が上がるとの見方もできます。
また、成人において子供を除く2親等以内に、鼻・眼・呼吸器・皮膚の中でアレルギー性疾患のあるヒトで動物にアレルギー症状のある方は約40%との調査結果もあります。
参考:わが国における実験動物アレルギーの発生状況
ネコを飼っている患者さんでは70%が特異IgE抗体陽性となり、ネコを飼っていない患者さんにおける34%と比較すると2倍ほど高いですが、ネコを飼っていなくても34%ほどが陽性となっています。
イヌの場合の調査結果では、室内犬と室外犬では室内犬を飼っている環境で生活する方が陽性率が高く、室内飼育の場合、新生児において陽性率は生後3カ月以内に高値になり、動物を飼っている実家に帰省の際に、アレルゲンと接触し発症する場合もあります。感作率を減らす対策としては、実家でイヌ、ネコなどを飼育している場合、帰省のタイミングで一時的に外や別の場所での飼育をしたり部屋の清掃などで、アレルゲンとの接触を減らすことは有効かもしれません。
参考:High prevalence of sensitization to cat allergen among Japanese children with asthma, living without cats.
参考:乳幼児アトピー性皮膚炎における犬アレルギーの検討
室内飼育の場合、室内に飛散するネコアレルゲンは、ダニに比べ40倍との報告もあり、フケなどのネコアレルゲンは空気中に飛散することで、直接ネコに接触しなくても、吸引により感作する可能性があります。
室内飼育の場合、フケなどネコアレルゲンが溜まりやすい場所として、廊下の壁53,400μg/g dust、テレビの上36,000μg/g dust、布製のイス34,900μg/g dust、リビングのカーテン11,200μg/g dust、リビングフローリング724μg/g dust、敷き布団431μg/g dust、和室畳418μg/g dustとの調査結果があります。
ネコアレルゲンに感作する量としては1μg/g dust以上、喘息発作に必要な量は8μg/g dust以上との意見もあり、室内飼育の場合、十分すぎる量が室内に存在していることになります。
参考:Custovic A, Green R, Fletcher A, Smith S, Pickering CA, Chapman MD, Woodcock A Aerodynamic peoperties of the majoe dog allergen Can f1:distribution in homes, concentration, and particle size of allergen in the air. Am J Respir Crit Care Med 1997;155:94-8
アレルゲンの接触量を減らす対策としては以下の観点もあります。
・ネコを漬け洗いで洗浄
ネコにとって過度な洗浄になることは避けたいところですが、1週間隔で1ヶ月間、3分間の漬け洗いで洗った3頭のネコは空気中のアレルゲンが平均79%減少し、洗浄効果は1週間内であればある程度継続した、との結果もみられています。
参考:Evaluation of different techniques for washing cats: quantitation of allergen removed from the cat and the effect on airborne Fel d 1.
J Allergy Clin Immunol. 1997 Sep;100(3):307-12.
Avner DB, Perzanowski MS, Platts-Mills TA, Woodfolk JA.
・清掃、空気清浄器を使用
カーペットの除去、猫の洗浄、空気清浄機等の併用で抗原量が57%低下する一方、カーペットを敷いたままだと7%しか低下しないとの調査結果もあり、カーペット、絨毯などの除去や空気清浄器の定期的な使用は有効とも言えますが、簡易モップで掃除をした2時間後には、ネコアレルゲンはフローリングに181μg/m2がたまってしまうとの結果もあります。
参考:幼稚園のペットと接触してアレルギー症状を呈した2症例 小児科 2001;42:125-8
アレルゲン量を減らす上では、ネコの洗浄など様々な清掃手段とを組み合わせる必要もありますが、アレルゲンの量を減らすことは出来ても、感作する量にはなり得、症状がある方が無症状になるとは言えないのが現状です。
長くネコ、イヌと室内で生活をしている方で、いままで症状が無かった方においても、ダニやカビなども影響し、アレルギー症状が出現する場合もあり得ますので、一緒に生活する上では可能な対策がおこなえるとよいかもしれません。
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