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2016.02.16
大豆油は大豆と名称が付くことからも、大豆アレルギーの方の中には除去をされている方もいらっしゃるかもしれませんが、大豆油にはどのくらい大豆タンパク質が含有されているのでしょうか?
大豆油はサラダ油として、植物油脂として加工食品にも使用されますが、多くは高度に精製されている油になっており、高度に精製された食用油におけるタンパク質含有量はごくわずかとされています。
日本マーガリン工業会技術委員会にて食用精製油脂(精製硬化魚油、精製牛脂、精製豚脂、精製大豆硬化油、精製大豆油(サラダ油、白絞油)、精製落花生油)中の残存タンパク質量について、(財)日本食品油脂検査協会に分析依頼をしたところ、以下のとおり分析結果はすべて1ppm(1μg/gまたは1μg/mL)未満であったと2002年に報告しています。
https://www.j-margarine.com/newslist/news3.html
総タンパク含量は、粗製油で100~300μg/mLである一方、精製油では1μg/mL以下であること言われており、ヒマワリ油の例では、原油時での総タンパク質含有量13.6μg/mlから、脱酸、脱ガム、洗浄、脱色、脱ガムの工程を経た精製油では0.22μg/mlへと減っており、大豆油では、コールドプレス大豆油(圧搾)で総タンパク質含有量1.8μg/mL、精製大豆油で0.32μg/mLと報告しています(参考:大豆油はアレルギー反応を引き起こすか? 2006)。
微量含有される食物のアレルギー表示については、2001年度厚生科学研究補助金、生活安全総合事業「食品表示研究班アレルギー表示検討会中間報告」 https://www.mhlw.go.jp/topics/2001/0110/tp1031-1.html にて、
「アレルギー症状を誘発する抗原量に関しては、総タンパク量として一般的にはmg/mL濃度(食物負荷試験における溶液mL中の重量)レベルでは確実に誘発しうるといえるが、μg/mL濃度レベルではアレルギーの誘発には個人差があり、ng/mL濃度レベルではほぼ誘発しないであろうと考えられる。
このことより、数μg/mLl濃度レベルまたは数μg/g含有レベル以上の特定原材料等の総タンパク量を含有する食品については表示が必要と考えられる。一方、食品中に含まれる特定原材料等の総タンパク量が、数μg/mL濃度レベルまたは数μg/g含有レベルに満たない場合は、表示は必ずしも必要としないと考えられる。
また、今後食物アレルギー物質にかかる検知法の開発では、加工食品中の特定原材料等のタンパク量を数μg/mL濃度レベル以下または数μg/g含有レベル以下まで検出可能となれば、表示の必要性の有無を確認するに十分な検知法となると考えられる。」(上記より出典)
と報告し、2001年12月に厚生労働省での追加改定にて、アレルギー物質を含む食品の表示については、加工食品中の総タンパク量が数μg/g(数ppm)に満たない場合はアレルギー表示の必要はないとしています。
尚、上記の、精製大豆油内の総タンパク質量0.32μg/mLとは0.32ppmになります。
日本では、最終製品の中に残存する特定原材料等が10ppm未満である場合、現行では表示が免除されており、EU、アメリカなどでは最終製品中にグルテンを含んでいてもグルテンフリーと表示できる基準は20ppmと設定されています。
そういった基準と比較すると、上記の0.32ppmは低い量と言えます。
「大豆油は大豆食品中ではもっともアレルゲン性が高い食品にリストアップされている。しかし、食用大豆油の総タンパク質含量は理論的にも、状況証拠的にもアレルギー反応を引き起こす閾値よりずっと低い。この不一致の背景について考察した。 その結果、原因として考えられる、
反応を引き起こす量のアレルゲンが残存している
反応を促進する量の脂質過酸化物が混在する
多く含まれるリノール酸が関与する
のいずれの点からも、大豆油をもっとも危険な大豆食品にランク付ける科学的根拠は見出されなかった。おそらく、食用油脂精製技術が未熟な時代の情報が、無条件に引用されてきたためであろうと推測された。大豆油に反応する敏感な大豆アレルギー患者は皆無ではないが、そのような特例を除けば、少なくとも大豆油は危険きわまりない食品ではなく、(大豆油よりも)タンパク質含量にかなりの違いがあり使用範囲も広い大豆レシチン標品に注意する必要があるように思われる。」
出典:大豆油はアレルギー反応を引き起こすか? 2006
「ED-Pでは大豆油と大豆レシチン、静注用脂肪乳剤にも大豆油が含まれる。大豆油は以前から食物アレルギーを起こす原因物質とされてきたが、近年、精製された大豆油に大豆由来の抗原は極めて微量で,アレルギーを起こす可能性は低く,むしろ乳化剤として使用された大豆レシチン(リン脂質)にアレルギーの原因となる大豆抗原が混入した可能性が高いとされている。よってペプディエットR や ED-Pに対するアレルギーは乳化剤として使用されている大豆レシチンが原因である可能性が高い。」
出典:成分栄養剤にアレルギー症状を呈した新生児・乳児消化管アレルギーの1例 2015
上記はともに、高度精製大豆油においての大豆タンパク質へのアレルギー誘発性の懸念よりも、乳化剤に含有される大豆タンパク質へのアレルギー誘発性に留意する必要性を示唆しています。
精製の程度によって含有される総タンパク質量が変わり、アレルギー誘発可能性が変わることから、いままでにもごく微量に反応した方につきましては、圧搾油(コールドプレスなど)などの高度精製でない油脂について留意されると望ましいかと思いますが、精製度合によっては食べられる可能性があると認識いただくのが良いかと思います。
一方、油で揚げたものに別の食物等が吸着する場合もあり、それが原因となる可能性もあるかもしれませんが、酸化した油によりヒスタミン放出が促進されることで、くしゃみ、鼻水、眼の痒み、涙眼、息切れ、肌の乾燥、発赤といった炎症反応が見られる可能性もあります。
大豆油摂取により不調があると感じる場合は、油の酸化状態や加熱温度も留意されるとよいかもしれません。
リノール酸などの多価不飽和脂肪酸の酸化とヒスタミンについて
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1164
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