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厳密な菜食により過剰摂取している可能性のある成分とは?

2016.05.23

投稿者
クミタス

菜食の方においては、穀類、豆類、ナッツ類を中心とした食事になりますが、動物性食物を摂取しないことで、微生物によって生成されるビタミンB12の欠乏リスクが高まります。
動物性食品を摂取しないことで欠乏しやすいビタミンB12
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/739

そのほかにも亜鉛、セレンの不足を示唆する報告もありますが、一方、厳密な菜食において、過剰になる可能性のある成分があります。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書で挙げられているのはマンガンで、18歳以降の女性の食事摂取基準(日本における目安量)で3.5mg/日、男性で4.0mg/日であるところを、菜食主義者では、最大13~20 mg/日のマンガン摂取量が起こりうる(出典:Schroeder HA, Balassa JJ, Tripton IH. Essential trace metals in man: Manganese. A studying homeostasis. J Chron Dis 1966; 19 : 545─71)ことを合わせて記載しています。

国内での調査においても、45日間、菜食を中心に生活した女性19名(平均年齢57.9±11.5歳、身長153.8±4.4cm、体重49.0±8.2㎏、BMI20.8±3.6kg/㎡)と平均的な食事をしている女性27名(平均年齢46.7±11.8歳、身長158.7±6.2cm、体重57.2±7.3㎏、BMI22.7±2.3kg/㎡)とを比較した2002年の調査では、菜食を中心とした方において1日のエネルギー摂取量は974kcal (21.9kca1/体重1kg)、タンパク質0.99/体重1kg、 脂質0.5g/体重1kg。1000kcal当りの栄養素摂取量は、レチノール当量、ビタミンK、葉酸、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、マンガンは有意に高値(2倍以上)であったが、ビタミンD、ビダミンB12、セレンは有意に低値であった、と報告しています(出典:中高年女性の菜食摂取における栄養・健康状態 : 血液流動性に及ぼす食事・体格・体組成と血液性状の影響)。

また3 名の女性ビーガン(Aさん、Bさん、Cさん。年齢の記載がないが30~49歳までの間と推測できる)の3日分の全献立(合計 9 献立)からマンガン含有量を調べたところ
Aさん:9.2mg、10.4mg、5.5mg  平均8.4mg
Bさん:6.5mg、5.2mg、4.5mg  平均5.4mg
Cさん:8.2mg、7.7mg、9.4mg  平均8.4mg
(参考:マンガンの1日摂取目安量3.5mg、耐容上限量11㎎)
と、1日の摂取目安量をいずれも上回り、耐容上限量に近い日もあることがわかります。
(参考:平成 21 年度厚生労働省科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業) 日本人の食事摂取基準を改定するためのエビデンスの構築に関する研究 − 微量栄養素と多量栄養素摂取量のバランスの解明 − 2.実測にもとづく菜食主義者の微量ミネラル摂取量)

マンガンの過剰摂取による影響


マンガンは主として経口摂取と吸入曝露により体内に取り込まれますが、吸入曝露では肝臓を経由せずに血中に移行するために迅速に吸収され、脳への移行も大きく、工場などでの職業上理由からの高濃度曝露によるパーキンソン病類似のマンガン中毒から低濃度長期曝露による神経行動学的機能低下まで、さまざまな報告がなされています。

アメリカにおけるマンガンの健康障害非発現量は11mg/日と推定されており、日本でもこの数値を成人の食事摂取基準耐容上限量としています。マンガンを過剰に経口摂取することでのリスクとしては、正確な検証が求められるところではありますが、サプリメント等も含め高容量でマンガンの過剰摂取が長期に続いた場合は、全身の衰弱感、食欲不振、筋肉痛、神経質、易刺激性、頭痛、また学習障害などの可能性はあり、高齢者、またマンガンの排泄経路である胆汁排泄系が完全に発達していない新生児はよりリスクが高くなる可能性も示唆されています。

マンガンを多く含む食品は以下等があります。
ヘーゼルナッツ、生姜、煎茶、豆腐、小麦粉、紅茶、あおさ、あおのり、くるみ、アーモンド、ピーナッツ、ひまわりの種、干しえび、のり、ごま、アマランサス、きくらげ、玄米、大豆、しそ、バジル、ひじき、栗、納豆、干し柿、しじみ、パインアップル、モロヘイヤ、ひよこ豆

海藻では、もずくや塩蔵わかめのマンガン含有量は比較的少なく、きのこの中では舞茸、マッシュルーム、野菜ではかぶや緑豆もやしは比較的少なくなりますので、日頃からマンガンを比較的多く含む食材を特に限定的に多く摂取している場合は、偏りのない選択ができると、尚良いでしょう。

ほかの出典・参考:マンガン及びその化合物に係る健康リスク評価について(案)
マンガン及びその化合物に係る健康リスク評価について(案)

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