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ピロリ菌とアレルギー性気管支喘息との関係~ピロリ菌によりアレルギー性気管支喘息発症リスクを低減する可能性

2016.11.27

投稿者
クミタス


ピロリ菌といえば胃炎や胃潰瘍、胃がんの原因の1つとして、除菌対策をされている方もいらっしゃることかと思います。

一方、特に小児期においてピロリ菌を保菌していることが、アレルギー性気管支喘息発症リスクを低減する可能性について示唆がなされています。

1999~2000年に米国立健康統計センターが実施した第4回米国民健康栄養調査(NHANES IV)を元にした報告では、小児7,412人のうち1990年代に出生した小児の5.4%がピロリ菌陽性者、
・3~13歳のピロリ菌保菌児は、非保菌児に比べ喘息発症率が59%低く、ピロリ菌保菌児は花粉症やアトピー性皮膚炎、発疹などのアレルギー疾患罹患率が40%低い
・3~19歳のピロリ菌保菌児は、非保菌児に比べ喘息リスクが25%低い
ことが示されています。

また、ハーバード大学などのメンバー(筑波大学含む)からなる共同研究では、2010年に発表した論文「Influenza infection in suckling mice expands an NKT cell subset that protects against airway hyperreactivity」の中で、インフルエンザA型ウイルスに感染した2週齢のマウスにおいて、感染によって肺のナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)が急速に増殖し、5週後に実験的にアレルギー性気管支喘息を誘発したところ、インフルエンザA型ウイルスを感染させなかったときと比べ、気道抵抗値の上昇や気道への好酸球浸潤の程度から判断して、病状を顕著に抑えられた、としています。
またナチュラルキラーT細胞は、ピロリ菌が産生するコレステロールの誘導体(コレステリルアシルグルコシド、ChAcG)によって活性されることも示しており、小児期にインフルエンザA型ウイルスに感染したり、ピロリ菌産生のコレステロール誘導体を投与されることにより、成長後のアレルギー性気管支喘息などアレルギー性疾患発症予防につながる可能性を示唆しています。

現在、胃炎や胃潰瘍の原因がヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)であることを報告し、ロビン・ウォレン博士とともに2005年度のノーベル医学生理学賞を受賞したバリー・マーシャル博士において、ピロリ菌を活用したアレルギー性疾患に関する対応剤の開発がおこなわれています。

小児期においてピロリ菌保菌、ピロリ菌産生物を有していることが、実際にアレルギー性気管支喘息などのアレルギー性疾患予防やコントロールに有効となるようであれば、今後、経口剤など具体的な方法で使用できるようになるかもしれません。


参考:Asthma Is Inversely Associated with Helicobacter pylori Status in an Urban Population.  2008
Helicobacter pylori colonization is inversely associated with childhood asthma. 2008
Coadaptation of Helicobacter pylori and humans: ancient history, modern implications. 2009
Does Helicobacter pylori protect against asthma and allergy?
Helicobacter pylori infection prevents allergic asthma in mouse models through the induction of regulatory T cells. 2011
Influenza infection in suckling mice expands an NKT cell subset that protects against airway hyperreactivity 2010

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