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2017.02.01
オマリズマブ (抗IgEモノクローナル抗体。商品名:ゾレア) は日本では既存治療で喘息症状のコントロールが難しい難治性の喘息患者さんに適用が認められている生物学的製剤の注射剤で、現在までに重症喘息治療以外に喘息合併の好酸球性中耳炎、好酸球性副鼻腔炎等の投与による改善例等が報告されています。
喘息合併の食物アレルギー患者さんでの使用例においては、
重症気管支喘息に卵、小麦アレルギー合併の7歳男児に、急速導入法にて卵での経口免疫療法を実施し、開始9か月後に気管支喘息が悪化した際に気管支喘息のコントロール目的でオマリズマブを投与開始したところ、1回摂取当たり症状誘発頻度が開始前の11.6%から2.2~5.8%と低下し、経口免疫療法開始13か月後に10日間の鶏卵除去を経て症状なく加熱卵1個の摂取が可能になった(経口免疫療法開始時の全身症状の誘発閾値は加熱全卵17.5g、急速法退院時の摂取量は炒り卵で全卵7.5g相当、5か月時に維持量の60g相当に到達)、また鶏卵での経口免疫療法終了後に、小麦においてもオマリズマブ投薬下で経口免疫療法を経て、小麦を制限なく摂取できるようになった(鶏卵アレルギーの急速経口免疫療法中にオマリズマブを投与した1例)
等の報告例があり、経口免疫療法においてオマリズマブを併用することにより、症状誘発頻度が低くなる可能性があり、また対象食物等により差や違いがある可能性はありますが、耐性獲得についてより評価が求められるところでもあります。
加水分解コムギアレルギーへの使用
茶のしずく石鹸を使用されていて、加水分解小麦アレルギーを発症しアレルギー症状がみられている患者さん、またはアレルギーの数値が高く小麦製品の摂取を控えている患者さん10名(注1)に、オマリズマブを3か月間投与したところ、小麦による白血球活性化が抑制された、との短期投与臨床試験を経て、2015年10月から20名を対象に長期投与試験が順次進めらています(小麦アレルギー患者における抗IgE長期療法の有効性の検討)。
こちらの試験結果がまとめられるのは2019年以降になる予定となっています。
慢性蕁麻疹への使用
2016年6月には「ゾレア®皮下注用75mg、150mg」(オマリズマブ)について、慢性蕁麻疹の治療薬として効能追加の承認申請がなされています。
抗IgE抗体製剤「ゾレア®」、慢性蕁麻疹の治療薬として効能追加の承認申請
https://www.novartis.co.jp/news/media-releases/anti-ige-antibody-formulation-xolair
慢性蕁麻疹の原因は様々考えられていますが、抗IgE抗体は慢性蕁麻疹に関与する自己抗体の1つで、抗IgE抗体製剤のゾレアを接種することで、血中や皮膚内の遊離IgEに結合し、肥満細胞(マスト細胞)や白血球の一種である好塩基球の活性化などを抑制することで、慢性蕁麻疹のそう痒・膨疹といった症状を抑制する可能性が考えられています。
オマリズマブと同じく分子標的薬であるメポリズマブ(商品名:ヌーカラ)は好酸球数が高い難治性喘息患者さんにおいて適している可能性があり、オマリズマブ(商品名)においては投与前の血清中総IgE濃度が1500IU/mLより高い方や体重が150㎏を超過している方には、現時点(2016年3月改訂)では基本的には使用されないこととなっていますが、医師の判断の下、使用される場合もあります。
メポリズマブは好酸球を活発にさせるIL-5への抗IL-5抗体、オマリズマブは抗IgE抗体と違いがあり、また今後、Th2反応を促進するサイトカインのIL-4、IL-13を阻害するはたらきが考えられるデュピルマブ、IL-13を阻害するレプリキズマブが使用できるようになる可能性があります。
デュピルマブはアトピー性皮膚炎における治療において使用される可能性があり、同じく抗体医薬で、抗IL-31RA抗体薬のネモリズマブ、抗IL-13抗体薬のトラロキヌマブについても試験が進められています。
今回はオマリズマブを中心にお送りしましたが、また他の抗体医薬品についてもお送りしたいと思います。
注1:日本アレルギー学会特別委員会の設定した加水分解コムギアレルギーの診断基準、あるいは厚生労働科学研究費補助金「生命予後に関わる重篤な食物アレルギーの実態調査・新規治療法の開発および治療指針の策定」研究班の小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシー診断基準を満たし、登録前1年以内に小麦製品摂取によるアレルギー症状の既往がある、または登録前4週以内の血清中小麦関連抗体値が高く(0.35Ua/ml以上)、小麦製品の摂取を制限している患者、と記載
皮膚バリア機能の制御に向けて①
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1828
出典・参考:難治性食物アレルギーに対するオマリズマブ併用免疫療法
鶏卵アレルギーの急速経口免疫療法中にオマリズマブを投与した1例
ゾレアを併用し急速経口免疫療法(ROIT)を施行した重症牛乳アレルギーの一男児例
小麦アレルギー患者における抗IgE長期療法の有効性の検討
A randomized, double-blind, placebo-controlled study of omalizumab combined with oral immunotherapy for the treatment of cow's milk allergy.
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