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食物アレルギーにおける耐性獲得について

2017.04.17

投稿者
クミタス

食物アレルギーにおいては、成長とともに、消化管の消化機能や物理化学的防衛機構の発達、経口免疫寛容の発達により、自然耐性獲得をしていくことがあります。
食物アレルギーの診断基準、対象者の重症度、耐性化の基準、耐性化を評価する時期や基準において統一されていない面があり、各国での報告で耐性化率に違いが見られているところでもありますが、小児期に発症した​卵、乳、小麦、大豆アレルギーにおいては、比較的に耐性獲得を期待し得る抗原との意見もあります。

国内での耐性化率に関する報告一例は以下にも掲載していますが
年齢が進むにつれてどのくらいの方が耐性獲得するか?
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1560

耐性化に影響する因子として、様々な抗原で共通して挙げられることの多いものに
・特異的IgE抗体値が低い
・皮膚プリックテストの膨疹大(直径)が一定未満
があり、またアナフィラキシーの既往、誘発症状の重症度なども挙げられる傾向にあります。

牛乳にアナフィラキシーの既往のある4歳以上の64人において、
耐性獲得群は20人
初回アナフィラキシー症状出現時の平均年齢 1.5歳
初回牛乳特異的IgE抗体価 16.5
牛乳特異的IgE抗体価が最高値であった年齢 1.5歳

加工品のみ摂取可能群は21人
初回アナフィラキシー症状出現時の平均年齢  1.6歳
初回牛乳特異的IgE抗体価  21.7
​牛乳特異的IgE抗体価が最高値であった年齢  2.5歳

完全除去群は23人
初回アナフィラキシー症状出現時の平均年齢  2.3歳
初回牛乳特異的IgE抗体価   56.4
​牛乳特異的IgE抗体価が最高値であった年齢   4.3歳

との報告もなされており、低月齢で発症し、早期に特異的IgE抗体価が低下する場合は、耐性獲得しやすい可能性があることが伺え、卵などの抗原においても早期に特異的IgE抗体価が低下する場合は、耐性獲得しやすくなる可能性があるとも見られています。

自然経過で早期に耐性獲得が期待できない場合には、適切な医療機関にて食物経口負荷試験にて症状誘発閾値を確認のうえ、経口免疫療法がなされています。
長く除去をしている間に自然耐性獲得をしていて、食べられるようになった状態に気付かず除去を継続しているケースも見られていますが、自然経過で耐性獲得が期待できる卵、乳、小麦、大豆アレルギーにおいては特に、最後にアナフィラキシーを含む症状が出現してから1年経過後には、受診のうえ、食物経口負荷試験により、どの程度摂取できるようになっているかの確認について相談できるのが望ましいでしょう。


出典・参考:The natural history of IgE-mediated cow's milk allergy
The Natural History of Milk Allergy in an Observational Cohort 
Clinical Predictors for Favorable Outcomes in an Oral Immunotherapy Program for IgE-Mediated Cow’s Milk Allergy 
牛乳アナフィラキシー患者の予後による臨床像の特徴
食物アレルギー 診療ガイドライン 2016 ほか

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