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昆虫、節足動物との接触、刺咬、吸血による皮膚症状

2017.06.10

投稿者
クミタス

昆虫、節足動物による刺咬、吸血また接触や媒介等により皮膚疾患を発症したり、感染症を発症することがあります。
皮膚疾患においては
・刺咬による皮膚への物理的刺激による炎症
・接触や刺咬により吸収する有毒物質の化学的刺激による炎症
・接触や刺咬により吸収する有毒物質や唾液腺物質へのアレルギー性炎症
の場合があります。
以下に、ハチ、アリ、サシガメ、蚊、ムカデ、クモ、サソリ以外の昆虫、節足動物における症状例、疾患をご紹介します。

■チャドクガ、モンシロドクガ(ドクガ科)、アオイラガ(イラガ科)、タケカレハ、クヌギカレハ、マツカレハ、ツガカレハ、ヤマダカレハ(カレハガ科)、タケノホソクロバ(マダラガ科)など

毒蛾皮膚炎(毛虫皮膚炎)
チャドクガ、モンシロドクガなどの毛虫の毒針毛が人の皮膚に接触すると炎症をおこし小水疱、丘疹などが出現します。毒針毛は0.1mmほどで脱落しやすいのですが、洗濯物に付着にしたまま着て症状出現することもあります。
幼虫による被害が多いですが、ドクガ類においては成虫の時期も含め全期間で毒針を保有し、幼虫は5月~6月と、8月~9月に、成虫は7月~8月と9月~10月に見られます。
ドクガ類は茶、また椿、さざんかなど庭木にもある歯を餌にし、イラガ類は桜、柿、梨、栗、ポプラの葉を、カレハガ類はクロマツ、アカマツ、ヒマラヤスギなどの葉、タケノホソクロバは竹、笹を餌にします。
幼虫、成虫、卵、針が存在する傾向にある食害された枝葉、葉の裏などは素手で触れないようにします。

針に存在する毒性物質はタンパク質が主成分と見られ、ドクガ類からはプロテアーゼ、エステラーゼ、キニノゲナーゼ、ホスホリパーゼA2、ヒスタミン、イラガ類からはヒスタミンと2種のタンパク性発痛物質が検出されており、ドクガ類は痒み、イラガ類は痛みが主症状の傾向が見られています。
もし針毛に触れてしまった場合は、湯や水で洗い流しセロテープなどのテープで針を取り除くようにし、また針が付着した衣類の洗濯時には湯を使用するようにすると、タンパク質が変性し毒性が低減することがあります。
室内に入ってきた場合は、殺虫剤をかけるとあばれて毒針毛をまき散らす場合がありますので、水で濡らした厚手の雑巾などで静かに押さえます。

■アオバアリガタハネカクシ、エゾアリガタハネカクシ、クロバネアリガタハネカクシ

線状皮膚炎
ヒトの体に接触した際や払いのけようと虫体に触れた際に体液に含まれる有毒物質ペデリンがヒトの皮膚に付着し、2時間程でかゆみ出現、2~3日で線状の皮疹、発赤、小水疱、腫脹、灼熱感、疼痛などが出現します。
水田、川原、池沼の付近など湿気のある土壌、雑草や落葉、朽木や石の下などに生息し、卵や幼虫、蛹の体液中にもペデリンは存在します。
皮膚や眼に付着した場合は、水で洗い流すようにし、体液の着いた指手で目をこすらないようにします。
眼に体液が入った場合には、炎症、眼障害を起こす場合もありますので、速やかに眼科に受診するようにしましょう。


■トコジラミ

トコジラミ刺症
南京虫とも呼ばれるシラミ目ではなくカメムシ目トコジラミ科の昆虫で、吸血されると紅斑や紅色丘疹が多数みられる場合があります。
トコジラミ刺症は吸血の際に皮膚に注入される唾液腺物質に対するアレルギー反応によって生じる皮膚炎と考えられ、トコジラミによる吸血が初めての場合は感作が成立していないため皮疹は出現せず、何度か吸血されると感作が成立し、吸血の1~2日後に痒みを伴う紅斑や丘疹が現れるようになると見られ、感作の成立状態によって症状に個人差があります。


■ネコノミ

ヒトにおけるノミによる吸血においてはネコノミが主な原因となり、ネコだけでなくイヌにも寄生し、野良猫、散歩を介して庭、草むらのネコノミが衣服に付着し室内に持ち込まれ、室内で繁殖されることがあります。
室内で繁殖すると上肢や体幹部までの紅斑、水疱に及ぶことがあり、オス、メスの成虫が吸血する際に注入する唾液腺物質に対するアレルギー反応である場合があります。


■ブユ

アシマダラブユ、キアシオオブユ以外では吸血しない種類もあり、メスの成虫のみ吸血し、春~初夏の日没前後と日の出前後の時間帯に活発になりますが、曇りで高湿度の時には日中も吸血することがあります。群を成して襲来し、頭髪内に潜り込んで吸血することも多くあり、山地の渓流や平野部の小川、用水などの中で比較的きれいな水が発生場所となります。
蚊よりも腫れが強く中心に赤い出血点が見え、メスの成虫が吸血する際に注入する唾液腺物質に対するアレルギー反応である場合があります。


■アカウシアブ、シロフアブ、イヨシロアブ、キンイロアブ、ゴマフアブ

一部の種類のメスの成虫のアブはヒトを吸血し、吸血する際に注入する唾液腺物質に対するアレルギー反応である場合があります。刺された瞬間に激痛を伴い、刺咬部は発赤、腫脹、中心部に出血斑、その後かゆみを伴う紅斑が生じる傾向が見られます。


■ヌカカ

ヌカカとはホシヌカカ、山間地域ではヌノメモグリヌカカ、ミヤマヌカカ、ナミヌカカ、平地ではニワトリヌカカ、海岸近くの住宅ではトクナガクロヌカカ、イソユカカなどの体長1.2~1.4mmほどの小さな蚊のように見える昆虫の総称になります。大量に発生したメスの成虫に多数の吸血を受け、皮疹が多発することがあります。
蚊に刺咬される場合と異なり、直後の痒みは比較的穏やかでも1日~3日後に激しい痒みと腫れが起こり完治までに1週間ほどかかり、成虫が吸血する際に注入する唾液腺物質へのアレルギー反応である場合があります。
体長の小ささからもヤブカと異なり露出部だけでなく頭髪内、衣服の隙間から入り込んで吸血することもありますので、6月~10月に湿地、水辺、キャンプ場等に出入りする際は、できるだけ防虫に心がけましょう。


~節足動物

■ヒゼンダニ

疥癬
ヒゼンダニがヒトの表皮にもぐりこみ、表皮内を進みみみず腫れのように見える疥癬トンネルを形成し産卵を繰り返していきます。
痒み、水疱も見られ、接触、寝具、落下した皮膚屑等を介してダニが移動し、複数人に蔓延することがあります。


■アカツツガムシ、タテツツガムシ、フトゲツツガムシ

ツツガムシ病
ツツガムシはダニの一種であり、ツツガムシ病はダニ媒介性リケッチア症の1つになります。グラム陰性の球桿菌であるオリエンティア・ツツガムシ(Orientia tsutsugamushi)を保菌するツツガムシに刺されて5~14日後に悪寒や頭痛を伴う40℃前後の発熱があり、その2~3日頃から体幹~四肢に2~5mm大で淡紅色の発疹が広がり7~10日で消失します。CRP強陽性、ASTおよびASLなどの肝酵素の上昇が見られる傾向にあり、治療が遅れると重症化する可能性が高まります。ほかに全身の有痛性リンパ節腫脹や結膜充血、咽頭発赤、肝脾腫などが出現することがあります。


■マダニ

ダニ媒介性脳炎
マダニが伝播するフラビウイルス属のウイルスが原因となり、今までに発生した北海道におけるダニ媒介性脳炎ではロシア春夏脳炎ウイルスが原因と診断されています。頭痛・発熱・悪心・嘔吐、また精神錯乱・昏睡・痙攣および麻痺などの脳炎症状が出現することもあると見られています。ダニによる刺咬だけでなく、感染したヤギや羊の原乳を飲んでも感染します。

ライム病
マダニが媒介する人獣共通の細菌(スピロヘータ)であるライム病ボレリアによる感染症で、日本でも発症例があります。
マダニ刺咬部に遊走性紅斑を呈することが多いですが、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、倦怠感などのインフルエンザ様症状を伴うことがあり、完治しないと皮膚症状、神経症状、心疾患、眼症状、関節炎、筋肉炎など、また重度の皮膚症状、関節炎などを示す場合がありますが、抗菌薬が有効と見られています。

マダニの活動期である春から初夏、秋に野山でマダニの刺咬を受けないようにすることが最大の対策になります。


■セアカゴケグモ

セアカゴケグモ咬症
咬まれた部位の皮膚の反応は特別強くはなく、紅斑が生じない場合もあり、皮膚疾患というよりも全身性の症状出現となることがあるセアカゴケグモ咬症においては、ゴケグモ類の毒液中に存在する遊離アミノ酸類、ヒアルロニダーゼなどの酵素類、分子量約13万のタンパク質性の神経毒(α-latrotoxin)等が有毒物質となり、疼痛、悪心、嘔吐、異常な発汗、倦怠、感覚異常、発熱など様々な症状出現の可能性があり、また指や腕を咬まれた場合、胸部痛が、下肢を咬まれた場合には、激しい腹痛が起こる場合があります。
5~10月のサンダル着用時、側溝の掃除時、植木鉢やプランタに触れる際は個体がいないか確認できると望ましいでしょう。


昆虫、節足動物に刺咬、吸血、寄生されたり、接触、媒介により皮膚疾患を発症することがありますが、アレルギー反応である場合等、症状に個人差があります。
症状程度が強い場合、全身症状が見られる場合は速やかに受診し、また腫れが強くなり発熱等がある場合は傷口から感染をおこし、蜂窩織炎となることもありますので、早く受診するようにし、繰り返し痒みが出現したり、痒みや発疹が軽減しない場合は受診し相談されるのが望ましいでしょう。


皮膚炎の原因となるガ類
https://www.pref.yamanashi.jp/eikanken/documents/yuudoku-kemusi.pdf
セアカゴケグモ咬症とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/3150-lh-intro.html

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