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感作率は増加しているのか?

2018.06.18

投稿者
クミタス

感作とは、抗原(アレルゲン)に曝露し、IgE依存性アレルギーでは、その抗原特異的IgE抗体が誘導され、アレルギー症状が生じるようになる状態のことになります。血中抗原特異的IgE抗体反応を調べるアレルギーの血液検査で、陽性になると、基本的にはその抗原に感作している状態であることがわかりますが、感作=発症ではなく、感作をしていても、発症はまだしていない状態であることもあります。

食物アレルギー患者さんにおけるアナフィラキシーの報告数、医療費も増えているとのアメリカでの報告のある中で、
例:2007年~2016年のアメリカにおける食物アレルギーでの医療費の動向、内訳
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2435
食物抗原の感作率は変わっていないのでは?との示唆が見られています。

オーストラリアでの研究で、1990-1994年に生まれたアレルギーの家族歴を有する620人の高リスク乳児(Melbourne Atopy Cohort Study [MACS])と、2006-2010年生まれの高リスク乳児のサブグループ3,661人(HealthNuts研究(n = 3,661 / 5,276))との、生年に15年ほど違いのある2つの群での、12ヶ月齢でのピーナッツ、卵、牛乳での皮膚プリックテスト(SPT:skin prick test)の結果を比較したところ、SPT≧95%陽性適中率(PPV)は、ピーナッツについては7.9%(95%信頼区間6.8-8.9)、7.9%(95%信頼区間7.0-8.8)、卵は15.0% (95%信頼区間13.4-16.6) 、14.5%(95%信頼区間13.4-15.7)、牛乳は2.4%(95%信頼区間1.6-3.1)、2.6%(95%信頼区間2.0-3.4)であり、SPT≧95%PPVは、2つの研究間で類似していた。

また、イギリス ワイト島での研究で、2001年~2002年の出生コホートと、1989年の出生コホートでの、ピーナッツタンパク質の感作率は変わらなかった、との結果も見られています。

アナフィラキシーの発生件数増の原因は?


オーストラリアでの研究においては、高リスク群の乳児においての食物抗原への感作率が約16年の間で、それほど違いが見られないとの示唆になりますが、オーストラリアでは同期間での食物アレルギーにおけるアナフィラキシーの増加が報告されています。

アナフィラキシーが増加している背景として、抗原感作から発症に至る例の増加、症状出現した際にそれが食物アレルギーによる反応であることの想起・認知増、診断の向上、重症度の上昇などが、考えられるところでもあります。

また、他の文献等も含めご紹介していきたいと思います。

出典・参照:The prevalence of food sensitization appears not to have changed between 2 Melbourne cohorts of high-risk infants recruited 15 years apart. 
The prevalence, natural history and time trends of peanut allergy over the first 10 years of life in two cohorts born in the same geographical location 12 years apart.

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