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イネ科植物花粉によるアナフィラキシーの例

2018.06.26

投稿者
クミタス

イネ科植物の花粉の多くは春~秋にかけて飛散し、5月から7月までに多く飛散するのが、カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリ、ネズミホソムギ(特に晴天下では午前中の8~10時がピークとの記述もあります)など、8月から10月までに多く飛散するのがヨシ、ギョウギシバなどになり、特にイネ科植物による花粉症は、5月から7月までに飛散する植物が原因になることが多いとみられています。

イネ科植物例:カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリ、ネズミホソムギ(ネズミムギ、ホソムギ含む)、オニウシノケグサ、ギョウギシバ、マグサ、スズメノテッポウ、アシ、ススキなど。

イネ科植物の花粉間では、共通抗原性があり、1つのイネ科植物の花粉にアレルギー症状がある場合、他のイネ科植物にも反応を示す可能性があります。

花粉は湿気を吸収すると破裂して微細化し、抗原などが放出されやすくなり、吸い込んだ場合、下気道まで到達する可能性があります。そのため花粉にアレルギー症状のある方において、雨後は呼吸器症状などが増悪しやすくなる可能性があり、梅雨の時期に飛散時期が重なるイネ科花粉は、群生場所付近で破裂し微細化した状態になっている場合もあります。

また、オオアワガエリのアレルゲンの1つ Phl p 1は、ヒト気道上皮細胞を刺激して、TGF-β、IL-6、IL-8 などのサイトカインを発現、遊離させるとみられており、イネ科植物花粉は、気道炎症をおこし、喘息の発症、慢性化、重症化に関与する可能性があると考えられています。
イネ科花粉により呼吸器症状を主としたアナフィラキシーを起こすことがありますが、喘息の既往のある方、無い方での例をご紹介したいと思います。

・喘息の既往のある方での例
12歳5か月の喘息のある女児で、従来より梅雨時期に発作が増悪する傾向があり、プロピオン酸ベクロメタゾンを吸入していたが、発作が軽減したため2月に中止した。6月にヒマラヤ杉とカモガヤ等のイネ科植物が群生する地域の伐採現場を通った約15分後より、上まぶたと口唇を中心とした顔面の浮腫、全身チアノーゼ、喘鳴を伴う呼吸困難が出現し、緊急受診した。受診時の意識レベルはJCS III-300(痛み刺激に反応しない)で血圧も触知不能であったが、直ちにアドレナリン、メチルプレドニゾロン等の救急処置を施行し、病院到着から1時間後に意識は清明、顔面の浮腫と全身のチアノーゼは消失、呼吸状態も改善した。発症の状況と血液検査(CAP-RAST)の結果から、イネ科植物花粉の大量吸入によるアナフィラキシーショックが考えられた(出典:イネ科植物花粉の大量吸入によりアナフィラキシーショックを呈したと思われる一例)

・喘息の既往の無い方での例
農業高校に通学の15歳女性で、田園実習開始20分後にくしゃみが出現、その後、咳、呼吸困難に至り、救急要請、到着時にも咳持続、両前腕に皮疹を認め、アドレナリン0.3mg投与後、改善し、病院でステロイド、抗ヒスタミン剤投与の翌日退院、血液検査(CAP-RAST)ではハルガヤ、カモガヤ、スギでクラス2、ヤケヒョウダニでクラス5、喘息の既往はなかったが、呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)は129ppbと高値で、気道炎症を制御するためブデソニド/ホルモテロール配合剤を投与開始、ImmunoCAP ISACでの検査で、 Phl p 1、 Phl p 4などが陽性で、喘息の既往はなかったが、Phl p 1が関与している可能性が考えられた(出典:イネ科花粉によるアナフィラキシーの1例)


スギ花粉は200kmまで飛散することがありますが、イネ科植物はその背丈からも花粉飛散距離は数m~数kmほど(風の強さなどにも依りますが、10m超で急速に減衰し50m内で多く見られたとの内容の報告もあります)と、スギ花粉と比較するとイネ科植物が生育する場所からそれほど離れていません。イネ科植物は様々ありますが、近づかないことでも、大量に吸入することの予防になりますので、5月~7月に野外で呼吸器症状、花粉症の症状の経験のある方は、川沿い、土手や田畑、あぜ道など付近に水があり、植物が群生している場所などには、近づかないようにしたり、吸入防止対策をできるのが望ましいでしょう。


出典・参照:イネ科花粉症に注意しましょう :国土交通省 関東地方整備局 江戸川河川事務所 
イネ科花粉(Allergens News Network メールニュース No.23)

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