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経皮感作と発症予防

2018.06.28

投稿者
クミタス

食物アレルギーの発症においては、家族歴、遺伝的素因などが影響する可能性も考えられますが、
食物アレルギーの予防のためには
・感作を防ぐ
・感作後の発症を防ぐ

ことが重要になり、そのためには
・食物アレルゲンの回避
・免疫寛容

が求められると考えられています。

食物アレルゲンへの感作においては、皮膚・粘膜経由での経皮感作、経口摂食での経腸感作、吸入による経気道感作、胎内感作、経母乳感作などがあり、食べる以外にも、複数の感作経路があります。
そのため食べなければ感作しない、とは言えず、実際に一度も食べたことがない食物の特異的IgE抗体値が陽性であったり、初めて食べた際にアレルギー症状が出現するということが起こっています。
どの経路でどのタイミングで感作したかを自覚、判明することは難しく、感作予防のため食物アレルゲンを完全に回避するということは困難なことでもあります。その中で、最近の研究では、皮膚・粘膜経由での感作の例が多く見られています。

食物アレルゲンには誰もが曝露する機会がありますが、発症しない場合は、免疫寛容が成立していると考えられています。腸での免疫寛容が重要な役割を果たしていると考えられており、経口免疫寛容が誘導されれば、発症を抑制でき得る可能性があります。
しかし、別の経路などで感作が成立してしまっている場合、経口摂取時に発症リスクが高まるとも考えられ、できるだけ感作成立する前に、経口摂取して免疫寛容を促すことが有用なのでは、と見られています
(マウスの実験で、高用量のピーナッツを経口摂取させることで経口免疫寛容が誘導されるモデルに、あらかじめピーナッツを皮膚に塗布しておくと経口免疫寛容が誘導されなかったとの報告もあり、経皮感作が経口免疫寛容誘導を失敗させ、食物アレルギー発症のリスクを高めるとの示唆もなされています)。

そのため、乳幼児においてピーナッツオイルの日常的な塗布などにより、経皮感作が成立することを避け、できるだけ早期から経口摂取をして免疫寛容を促すことが、発症予防につながる、と最近では考えられるようになっています。


卵アレルギー発症リスクを低減し得る可能性について
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2127

免疫寛容後に発症することも~寛容状態の破たん


一方、それまで食べることができていた、免疫寛容が成立していた食物にアレルギー症状が出現する場合もあります。

免疫寛容成立後に湿疹やアトピー性皮膚炎など皮膚症状が出現したり、皮膚バリア機能が低下し、皮膚から食物抗原感作が進行し、特異的IgE抗体値が上昇。その食物を除去し、定期的な経口摂取を中断することで、寛容状態が破断し、その食物にアレルギーを発症すると考えられるケースです。

6歳の女児で、2歳まで湿疹や食物アレルギーの症状がなく、非加熱鶏卵も食べられていたが、3歳ごろから湿疹が出現し始め、他院でアトピー性皮膚炎と診断され、血液検査で卵の特異的IgE抗体値の上昇が見られ、卵除去の指示を受けた。アトピー性皮膚炎は経年的に悪化し、6歳時に別の病院に受診したところ特異的IgE抗体値は卵白684UA/ml、オボムコイド756UA/ml。アトピー性皮膚炎は重症と診断され、皮疹のコントロールをおこなった。食物経口負荷試験では3g摂取後に腹痛、下痢、まぶたの発赤を認め、卵アレルギーと診断された(出典・参照:卵の耐性獲得をしていた児が、幼児期に発症したアトピー性皮膚炎を契機に卵アレルギーを発症した6歳女児例)。

茶のしずく石鹸での発症例においても、経皮感作による寛容状態の破たんが要因の1つなのではないかと考えられています。
まだ明確になっていない面もあり、ほかにも免疫寛容の破たんに関与する要因がある可能性はあります。またアップデートしていきたいと思います。

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