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2018.10.27
歯科インプラント治療後に併発症が出現することがあり、上部構造の破損、知覚麻痺やしびれ、歯肉退縮、インプラント周囲炎などが挙げられます。
プラーク(歯垢)細菌は、歯周炎を起こすことがありますが、同様にインプラント周囲組織に影響を及ぼし、炎症を起こすことがあります。現行の歯科インプラントにおいては、歯根膜を持たないことで強い過重負担がかかるうえ、骨と直接接していることで、細菌感染が起こると天然歯よりも炎症の進行と組織の破壊が急速に進行する、と考えられています。
インプラント周囲炎の発症率は10%以上との報告もありますが、歯科にてチタン合金製インプラントを埋入後、インプラント周囲炎を発症し、チタンアレルギーを発症したと考えられる例なども見られています。
・25歳女性にて、インプラントを植立し、上部構造を装着した6か月後に、インプラント体そのものは動かなかったが、インプラント周囲歯肉のわずかな膨脹と深いポケット形成を認め、インプラント周囲の骨吸収が認められた。自家骨による骨の再生を試みたが骨吸収は止まらず、口内炎、舌炎、口腔扁平苔癬、掌蹠膿疱症、難治性粘膜皮膚疾患などの症状の自覚はなかったが、アクセサリー装着時にかゆみ、膨疹が出たことから金属アレルギーテストをおこなったところ、チタン、金、ニッケル、スズ、パラジウム、イリジウム、カリウム、銅に陽性反応が認められた
・30代女性にて、インプラント埋入からインプラントは5年以上安定しており、自然歯周囲の歯周組織に炎症も認められていませんでしたが、9年後に進行性の骨吸収が生じ、チタンアレルギーが強く疑われ、インプラントを除去した直後に骨の再生が観察された
インプラント治療後にアレルギー症状を示した患者さんの 50% 、インプラント体の早期の不調を示した患者さんの 62.8% でチタンにアレルギー陽性となったとの報告もあり、インプラント埋入後にインプラント周囲の歯肉などに腫れが起こっていたり、インプラントが動く、インプラント周囲に痛みなどの違和感があったり、口内炎、舌炎、口腔扁平苔癬、掌蹠膿疱症、難治性粘膜皮膚疾患、またはアクセサリーなどの金属接触時にかゆみなどの症状がある場合、インプラント周囲炎を発症し、金属アレルギーを発症している可能性があります。
チタン以外の金属にアレルギーがある場合や、皮膚炎などアレルギーによる症状が疑われる患者さんでのパッチテストでは、チタン陽性率はより高くなるとの示唆もあり、他金属に陽性反応を示していた方、アレルギーの既往のある(と疑われる)方は、チタンにアレルギー反応を示す可能性がより高くなる場合があります。
インプラントの主要素材にチタンが挙げられますが、チタンイオンは、歯周病原細菌エンドトキシンによる炎症性サイトカイン産生を助長するとの示唆があり、チタンイオンはインプラント周囲炎の増悪因子となる可能性も考えられています。
インプラント埋入前の方で、アレルギーの既往のある方は特に金属アレルギーのテストをおこなえるのが望ましいところですが、インプラント埋入後、インプラント周囲炎の進行、チタン感作、チタンアレルギー発症に備える意味でも、口腔内の清掃を心がけ、口腔内の違和感、金属接触時の違和感を自覚する場合は早めに受診できるのが望ましいでしょう。
出典・参照:Influence of Titanium lons on Cytokine Levels of Murine Splenocytes Stimulated with Periodontopathic Bacterial Lipopolysaccharide 西村孝太
インプラント術前検査としてのチタンアレルギー検査の意義 広島大学病院 口腔検査センター 北川雅恵 広島大学大学院医歯薬保健学研究院 口腔顎顔面病理病態学 大林真理子
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