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アスリートと喘息 11.29更新

2018.11.25

投稿者
クミタス

アスリートにおいては、気管支喘息罹患率が高い傾向にあり、
・2012年のロンドン五輪に際し、参加する日本選手団に対して、呼吸機能検査を行ったところ、非アスリート群では約5%であったが、約12%のアスリートが喘息とみられた(国立スポーツ科学センター)
・2007年1月より2008年6月までに新潟県スポーツ医科学センターを体力測定目的に受診した中高校のアスリート1,125名に対し、喘息の既往および症状に関する問診票と呼吸機能検査にてスクリーニングをした後、新潟大学医歯学総合病院にて精密検査を行った。ウインタースポーツでの有症率は高値であり、種目別では、持久性の高い種目に有症率の増加(10%以上)を認めた(アスリート喘息症例の解析 新潟大学大学院医歯学総合研究科 小屋俊之) 
など、特に世界的にも自転車競技、水泳、クロスカントリー、アルペンスキー、スケート競技など耐久種目や冬季種目での喘息罹患率が高いとの示唆もあります。

アスリートにおいては、強度の高い運動により膨大な換気量を要し、気道の乾燥、冷気の吸入により気道の炎症を引き起こし、また過換気にともなう肺胞の過伸展が起こりやすい状態とも言えます。運動誘発気道収縮気道上皮組織を傷害し、バリアー機能が低下した状態で、喚起量の多さから花粉や、大気中物質(消毒剤由来の揮発性ガス含む)の暴露量が増大することも増悪因子の1つに考えられています。

しかしながら、2000-2006年のオリンピック(シドニー、ソルトレイク、アテネ、トリノ)での統計によると、喘息と申請したアスリートの中でのメダリストの割合は、喘息と申請していなかったアスリートよりも高く、特に冬季競技では際立っていた、などの報告もあります(FitchKD,Sue-ChuM,AndersonSD,BouletLP,HancoxRJ,McKenzieDC,BackerV,Rundell KW,AlonsoJM,KippelenP,CummiskeyJM,GarnierAandLjungqvist A:Asthma and the elite athlete: summary of the lnternational Olympic Committee's consensus conference, Lausanne,Switzerland,January22-24, 2008. JAllergy Clinlmmunol;122:254-260,60el-7,2008.)。

喘息のコントロール


アスリートの喘息においては、強度の高い運動量を増すことは、発症や悪化の契機となることがあり、症状は激しい運動時に出現しやすく、運動をしていない時間帯では症状は目立たない場合もあります。運動に誘因される喘息症状においては、幾つかの予防、対処方法例も挙げられています。

・運動前の十分なウォーミングアップ
運動前に適切で十分なウォーミングアップを行い、軽い運動誘発喘息をおこすことにより、目的とする運動の際に運動誘発喘息を予防、または軽症化する対策の1つに成り得る場合があると示唆されています。

・薬物療法
適切な気管支喘息の治療を受けていることが最も大切で、吸入療法や内服薬が十分に実施されていることは、運動誘発喘息の予防につながり得ます。運動の強度、運動量、病態などによっても吸入薬のみでなく薬剤などを組み合わせる場合もありますが、運動誘発喘息の予防、軽症化においては、状態に合わせた療法を医師と相談できるのが望ましいでしょう。

β2刺激薬
運動15分前にβ2刺激薬の吸入(セレベント、サルタノール・インヘラー、アイロミール、ベネトリンなど)を行うか、60分前にβ2刺激薬の内服を行うことによって運動誘発喘息を抑制します。

ロイコトリエン受容体拮抗薬
ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン、シングレアなど)の内服

クロモグリク酸ナトリウム
運動15分前の吸入(インタール、ステリネブクロモリンなど)も運動誘発喘息の予防に有効と見られています。

その他

喘息の吸入薬においては、ドーピング規制の中でも(添付文書内の用法、容量内などで)使用可能な薬剤もあります。薬剤によっては恒常的な使用により、気道過敏性の亢進をもたらす可能性がある場合がありますので、国体など含め、ドーピング検査を受ける場合がある方は、世界アンチドーピング機構の最新の基準も確認のうえ薬剤選択、使用量の相談ができると良いでしょう。

・マスク着用
呼吸困難感を生じる場合がありますが、気道の乾燥、冷却を防ぎ、加温と加湿効果を高める作用が考えられます。

上記以外の対策例なども今後も情報をアップデートしていきたいと思います。総合的な管理を目指していきたいですね。

出典・参照:小児気管支喘息治療管理ガイドライン
知っておきたい アンチ・ドーピングの知識

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