カルシウムは骨格形成だけでなく、カルシウムイオンとして血液凝固や神経系の刺激伝達、筋内の収縮、細胞内情報伝達などにも関与します。カルシウムは経口摂取した後、主に小腸で吸収されますが、吸収率は比較的低く、成人では25~30%程、9歳以下では35~40%程度と見られ、男性は12~17歳では45%、女性は10~14歳で45%と高くなり、男性では50歳以降、女性は30歳以降の吸収率が30%未満と低くなります。
体内のカルシウムは99%は骨、歯に、軟組織、血清を含む体液中に1%ほど存在し、不足時は骨からカルシウムが溶出します。吸収されないカルシウムは、尿、便に含まれ体外に排出されますが、汗に含まれ皮膚経由でも排出され、経皮的損失量は排出量の14~17%を占め、推定平均必要量は以下で算出されます。
推定平均必要量 = (体内カルシウム蓄積量 + 尿中カルシウム排泄量 + 経皮的カルシウム損失量) ÷ 見かけの吸収率
カルシウムの吸収向上のために
カルシウムの腸管における吸収率は年齢以外にも、食品の種類、一緒に吸収する他の栄養素や消化管内のpHなどの影響も受けるとみられています。
●食品中に含まれるカルシウム量
牛乳 220mg/コップ1杯(200g)
ヨーグルト 120mg/1パック(100g)
プロセスチーズ 126mg/1切れ(20g)
小松菜(アブラナ科) 119mg/4分の1束(70g)
菜の花(アブラナ科) 80mg/4分の1束(50g)
水菜(アブラナ科) 105mg/4分の1束(50g)
切り干し大根 81mg/煮物1食分(15g)
ひじき 140mg/煮物1食分(10g)
さくらえび(素干し) 100mg/大さじ1杯(5g)
ししゃも 149mg/3尾(45g)
木綿豆腐 180mg/約2分の1丁(150g)
納豆 45mg/1パック(50g)
厚揚げ 240mg/2分の1枚(100g)
●カルシウムの吸収向上のために(一例)
可能性として以下などが挙げられます。
・ビタミンD、フラクトオリゴ糖、カゼインホスホペプチド(CPP)、クエン酸リンゴ酸カルシウムなどはカルシウム吸収を促進する面があるとの示唆があります。
⇒他の物質による影響可能性などについては、まだ明確になっていない面もあります。またビタミンDは日光照射により皮膚でも生成されます。
日光照射におけるビタミンD生成と皮膚への影響面とのバランス
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1434
・シュウ酸はカルシウム吸収を阻害する可能性がある
⇒シュウ酸とカルシウムが結合すると溶解性が低減し吸収率が低下する可能性が考えられています。水溶性シュウ酸塩を含む野菜(ほうれん草など)においては茹で汁にも溶出しますので調理方法にも配慮し、多く含有する食物の過剰にならない範囲での摂食、またカルシウム吸収を高める食物の摂食も心がけると良いでしょう。また阻害程度等において諸論ありますがフィチン酸において吸収低下可能性を挙げる示唆もあります。
・ナトリウムはカルシウムの排出を促進する面がある
⇒カルシウム吸収率を高める観点からも減塩を心がけられるのが望ましいでしょう。
・炭酸カルシウムの吸収は胃酸に依存する
⇒貝殻粉、卵殻粉などは、胃酸レベルが正常であることで吸収率が高まるとみられています。
・運動不足はカルシウム吸収を妨げる場合がある
⇒適度な運動は胃腸の動きを高める作用があり、また骨からのカルシウム溶出を防ぐ面があります。
・ステロイド薬の副作用の1つとして骨量減少(骨粗鬆症)が挙げられています
⇒18歳以上で3か月以上の経口ステロイド薬使用がある(予定含む)場合は、食事、運動での対応以外に骨粗鬆症の進行を防止するための薬剤などの併用が検討されます(参照:ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン)。またがん治療に使用される薬剤においても骨粗鬆症リスクが考えられる場合があります。
乳アレルギーの方、乳糖不耐症の方においても、牛乳以外にも他の食物からのカルシウム摂取が可能でもあり、カルシウム摂取においては、最低限の除去からの幅広い食品の摂食、吸収力を高める摂取、骨の代謝にも関与する可能性が考えられているビタミンKも比較的多く含む納豆、海苔、小松菜などの選択機会を増やせると良いかもしれません。またビタミンD、カルシウムの極端な過剰摂取は、血管や組織の石灰化、腎臓結石のリスクが高まる可能性もあり、にがりの過剰摂取により、高マグネシウム血症、高カルシウム血症に至った例もありますので、サプリメントなどでの極端な過剰摂取にもご留意ください。
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