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乳幼児期の栄養欠乏~多品目の除去から

2019.01.02

投稿者
クミタス

食物を摂取して違和感、症状を自覚する場合は、食物アレルギーなのか、食物アレルギーであれば閾値の把握を食物経口負荷試験などを経ておこない、除去が必要な場合は必要な期間にて最小限の除去に留めておこなうところですが、必要以上に多品目での長期に渡る除去により、栄養の欠乏、あるいは摂食傾向の偏りから特定の栄養の摂取過剰などを引き起こすことがあります。

「生後6か月まで完全母乳栄養で、6か月で一般人工乳を初めて摂取した後、体幹、顔面に蕁麻疹が出現、下痢を生じ、前医で牛乳アレルギーと診断され、乳清加水分解乳の使用と乳製品の除去を指示された。乳児の姉が卵アレルギーであったが、自己判断により母親自身は妊娠授乳中をとおして菜食主義にしており、生後6か月から開始の患児の離乳食においても野菜中心で乳以外に卵、魚介類、肉類なども除去されていた。
生後10か月時での血液検査では、クレアチンキナーゼ(CK) の上昇とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、乳酸脱水素酵素(LDH) の軽度上昇を認め、低カルニチン血症を認めたため原発性カルニチン欠乏症と続発性カルニチン欠乏症の鑑別目的で、L―カルニチン450mg日の経口投与を 1週間行い、肉類の摂取を開始したところ、クレアチンキナーゼ(CK)値、遊離カルニチン、アセチルカルニチン値はいずれも改善し、他のアシルカルニチンに異常を認めることはなかった。その後、L―カルニチンの内服を中止しても、血中遊離カルニチンの低下、クレアチンキナーゼ(CK)値の再上昇を認めず、発達の遅れや痙攣は認めてはいない」女児の例も報告されています(出典・参照:厳格な食物除去によりクレアチンキナーゼ高値と低カルニチン血症を 呈した食物アレルギーの 1 例 福井大学医学部病態制御医学講座小児科 白﨑仁幸子、河北亜希子、吉川 利英)。

上記女児においては、生後1才3か月頃まで乳以外にも、卵、魚介類、肉なども除去した食事が続いたことによる続発性カルニチン欠乏症が筋組織障害に伴うクレアチンキナーゼ(CK)値上昇が考えられた例になります。
カルニチンは、必要量の75%ほどが食事から補給され、25%ほどは人間の体内でも必須アミノ酸のリジン(リシン)とメチオニンから生合成されます。カルニチン、リジン、メチオニンを多く含む食物に卵、乳、魚介類、肉が挙げられ、合成能が低く、筋肉量が少ないため体内蓄積量が少なく利用率が高い乳幼児期においては特に、長期の過度な不足状態はできるだけ避けたいところでもあります。
場合によりカルニチン欠乏状態で筋力低下、低血糖、肝機能障害、意識障害、けいれん、心筋症リスクなどが高まる可能性もありますが、カルニチンが欠乏する状態では、セレン、亜鉛、ヨウ素、鉄、ビタミンB2、ビタミンD3、ビオチンなど他の栄養素も欠乏している場合があります。牛乳アレルゲン除去調製粉乳において、カルニチン、ビオチンなども添加、含有されるようになっていますが、乳幼児期においては特に必要範囲内での摂取制限、また比較的に多く含有する摂食可能な食物の摂取が望ましいところでしょう。

以下一例(文献により数値に違いがある場合があります)

カルニチンを多く含む食物・食品 100gあたり含有量(mg)
肉類 羊肉(マトン) 208.9
肉類 牛肉(ランプ) 130.7
肉類 鶏レバー  94
肉類 牛肉(ヒレ) 59.8
肉類 豚肉  35
肉類 ハム・ソーセージ  28.7
貝類 あさり 23.8mg
貝類 牡蠣 23.1mg
 
リジン(リシン)を多く含む食物・食品 100gあたり含有量(mg)
魚類 とびうお 煮干し   7,300
牛乳 カゼイン   7,100
魚類 かつお節   6,600
魚類 さば節   6,500
魚類 かつお削り節   6,500
魚類 まだら(干しだら)  6,400
魚類 たたみいわし   6,400
魚類 とびうお(焼き干し)   6,300
鶏卵 乾燥卵白   6,100
魚類 かたくちいわし(田作り)  6,000
魚類 かたくちいわし(煮干し)  5,800
豆類 大豆たんぱく   5,500
魚卵 かずのこ   5,400
肉類 ビーフジャーキー   4,600
貝類 ほたてがい貝柱   4,300
 
メチオニンを多く含む食物・食品 100gあたり含有量(mg)
鶏卵 乾燥卵白   3,200
牛乳 カゼイン   2,600
魚類 さば節   2,400
魚類 とびうお 煮干し   2,300
魚類 かつお削り節   2,200
魚類 まだら(干しだら)  2,200
魚類 かつお節    2,200
魚類 とびうお(焼き干し) 2,000
魚卵 かずのこ    2,000
魚類 かたくちいわし(田作り)  2,000
魚類 たたみいわし  2,000
魚類 かたくちいわし(煮干し)   1,900
鶏卵 乾燥全卵    1,600
軟体動物 するめ  1,600
貝類 ほたてがい貝柱    1,500
肉類 ビーフジャーキー    1,400
魚類 うるめいわし(丸干し)   1,300
魚類 いかなご(煮干し)   1,300
魚類 すけとうだら(すきみだら)   1,300
穀類 小麦たんぱく(粉末状)   1,300


多品目の食物除去による身長への影響
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1721
食物アレルギーの観点での小児における鉄欠乏
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1830
動物性食品を摂取しないことで欠乏しやすいビタミンB12
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/739
厳密な菜食により過剰摂取している可能性のある成分とは?
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/1445

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