Author クミタスさん
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2019.03.12
細菌、ウイルス、寄生虫への暴露が少ないことで、免疫システムが正常に反応する能力が低下し、アレルギー性疾患などの発症に影響を及ぼすという衛生仮説の考え方があり、農村部で生育する児は、アレルギー性鼻炎、喘息の発症率が低いとの示唆もあります。周辺環境の違い、習慣も考えられますが、居住地域によりアレルギー発症状況に違いはあるのでしょうか?
南アフリカの都市部1,185人、農村部358人の12~36か月児を対象に、皮膚プリックテストを行い、食物アレルギーの疑いのある児には経口負荷試験を実施し発症状況を比較したところ、食物アレルギーの発症率は都市部で2.5%に対して農村部では0.5%、食物抗原への感作率は都市部で11.4%、農村部では4.5%、と都市部の方が高かった、との報告があります(Botha M et al. Rural and urban food allergy prevalence from the South African Food Allergy (SAFFA) study. J Allergy Clin Immunol 2019; 143: 662-8.)。
国内でも京都市の学童を対象とした2002年の疫学調査でアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、スギ花粉症の有病率は農村部より都市部の方が高い(出典:大規模疫学調査からみた学童期スギ花粉症の実態)との報告もありますが、
近年の状況としてアメリカの都市部と農村部との違いとして、2007年~2016年の間の食物アレルギー診療での保険金請求件数が、都市部では70%増であるのに対し、農村部では110%増と農村部での伸びがより高い状況となっており、近年では農村部でのアレルギー発症頻度が増加している面が伺えます。
牧畜農場近辺で生育する子供は喘息を発症する可能性が低いとの示唆も見られていますが、最近では内毒素であるエンドトキシンに暴露された農場のちりを吸引すると、肺に炎症反応をおこしますが、その後、気道がアレルゲンを取り込むのを抑制し、喘息症状を防御する働きを示す、そして消化管を経てアレルゲンを取り込み腸管で免疫寛容を成立させるのでは、との見解も見られています。
東南アジアの山岳民族モン族とカレン族の女性500名ほどの中で
現在タイの山岳地帯に居住、
タイで生まれて米国へ移住した、
アメリカで生まれた、
3つのグループに分け、体重などの健康データ、24時間前からの食事内容と収集した便を分析したところ、タイで生まれて米国へ移住したグループでは、最初の6〜9ヶ月で腸内細菌に急激な変化がおこり、その後アメリカ滞在中は欧米人に多く見られる腸内細菌が定着していた、
プレボテラ コプリは、ヒトの腸内に生息するプレボテラ属の主要な細菌のひとつで、食物繊維を分解する能力が高く、健康なタイの菜食主義者においては、プレボテラ コプリ(Prevotella copri) 、クロストリジウム ネクサイル(Clostridium nexile)、ユーバクテリウム エリジェンス(Eubacterium eligens)が多く見られ、非菜食主義者においては バクロイデス ブルガタス(Bacteroides vulgatus)が多く見られた、
との報告など、食習慣の違いからの腸内細菌の違いが現れることもあります。
居住地域が都市部であっても、生育する過程で感作、免疫寛容成立により発症を抑えられ得るところでもありますが、農村部で生育する場合、微量のエンドトキシンに繰り返し曝露することがアレルギー発症抑制に関与する可能性が考えられ、他の影響因子について今後もアップデートしていきたいと思います。
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