食物アレルギーのうち主に消化器症状を呈するものは消化管アレルギーと呼ばれ、IgE依存性、混合性、非IgE依存性のタイプがあります。新生児、乳児に生じる場合は非IgE依存性であることが多く、新生児・乳児非IgE依存性食物蛋白誘発胃腸症(新生児・乳児消化管アレルギー)と呼ばれています。非IgE依存性の消化管アレルギーにおいては、以下の分類がなされております。
① food protein-induced enterocolitis syndrome (FPIES):食物蛋白誘発胃腸炎
② food protein-induced allergic proctocolitis (FPIAP):食物蛋白誘発直腸大腸炎
③ food protein-induced enteropathy (FPE):食物蛋白誘発胃腸症
食物蛋白誘発胃腸炎は、食物抗原摂取後に嘔吐、下痢、下血などを来たす比較的急性期の疾患で、病変部は全消化管に及びます。乳児期早期までは牛乳が、離乳食開始後は卵や小麦、大豆など牛乳以外の食物が原因となることがありますが、小麦による食物蛋白誘発胃腸炎においては以下の報告例もあります。
生後6か月時にパン粥ひと口では症状は出現していなかったが、生後7か月時にパン粥3口摂食1時間後に2回嘔吐した。少し後に素麺を大さじ1杯摂食し1~2時間後からチアノーゼを伴う嘔吐数回と活気低下があり、クリニックで輸液治療を受けた。
9か月時、パン粥4口摂食し1~2時間後に嘔吐3回、活気低下、発熱を認め、救急外来に受診し輸液治療を受けた。
その後、小麦は除去されていたが調味料や麦茶は摂食可能で、鶏卵、乳、大豆、肉、魚、大麦は症状無く摂食可能であり、消化管症状が中心であったため、いずれの病院でも胃腸炎と言われていたが、ご家族が食物アレルギーを疑い、1歳1か月時に他院で精査をしたところ、特異的IgE値は小麦、グルテン、ω-5グリアジンとも0.1未満UA/ml(陰性)で、症状などから消化管アレルギーが疑われ、抗原特異的リンパ球刺激試験をおこなったところ陽性であったことなどから、消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸炎)と診断された(出典・参照:小麦による消化管アレルギー(FPIES)の1例)。
乳児期にアトピー性皮膚炎と卵の食物アレルギーを発症した4歳の男児にて、小麦摂食後に嘔吐していたが、小麦の特異的IgEは0.1UA/ml(陰性)未満で、継続摂食となっていた。その後も自宅で同様の症状を繰り返したため、1歳4か月時にゆでうどん30gの食物経口負荷試験を実施すると、70分後と150分後に2回嘔吐し、体調の回復までに5時間を要した。皮膚症状など他の症状は認められなかったことなどから、小麦の食物蛋白誘発胃腸炎と診断され、一定期間の小麦除去となった。特異的IgEは2歳時に0.5UA/mlと軽度に上昇していたが、3歳時にゆでうどん10gによる食物経口負荷試験をおこなったところ、陰性であったため、自宅にて安全摂取量の定期的な摂食を進め、食物経口負荷試験を繰り返しながら30g→60g→100gと増量し、除去解除となった(出典・参照:幼児期に耐性を獲得した乳児期発症の小麦FPIES の1例)。
摂食後早期にアナフィラキシー様症状を呈する場合があり、慢性化すると食物蛋白誘発胃腸症に移行し、難治性の下痢症を呈し体重増加不良を来たすこともありますが、上記の例のように定期的な摂食などにより寛解に至ることもあります。
また他の食物での例も含め掲載していきたいと思います。
出典・参照:新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症 Minds 準拠診療ガイドライン(実用版)2018.5.25
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