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胃酸分泌抑制薬とアレルギー発症リスク

2019.07.25

投稿者
クミタス

胃酸分泌抑制薬には、プロトンポンプインヒビター(プロトンポンプ阻害薬)やヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)などがあり、胃食道逆流症(GERD)の治療でも使用されます。
胃食道逆流症(GERD)は、乳児~成人喘息患者さんにおいて併発することがあり、胃食道逆流は咳を誘発する場合がありますが、胃食道逆流症(GERD)に誘発される咳へのプロトンポンプインヒビター(プロトンポンプ阻害薬)の効果は限定的で、また否定的な考察を含め複数の報告をまとめると胃食道逆流症(GERD)の症状がある喘息患者さんにおいて、胃酸分泌抑制薬はわずかではあるが喘息の改善効果がみられる場合がある、と胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015(改訂第2版)に記述されており、有意に治療効果があるとはされていないところでもあります。
また、プロトンポンプインヒビター(プロトンポンプ阻害薬)のランソプラゾール(タケプロン)は、気管支拡張剤のテオフィリンと併用すると、テオフィリンの効果が減弱することがある旨、テオフィリンの添付文書に記載されている薬剤の1つであり、併用でテオフィリンの効果が弱くなる場合もあります。

そして、胃酸分泌抑制薬が咳や喘息に有用とならない場合がある可能性だけでなく、アレルギー疾患の発症リスクを高める可能性も示唆されています。
乳児の制酸剤、抗菌薬使用とアレルギー性疾患の発症リスクとの関連性を示唆する報告は以下でも掲載しておりますが、
腸内細菌叢と炎症、アレルギー~制酸剤、抗菌薬
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2655

別の報告で、3つの健康保険組合より2011年度~2014年度までのレセプト情報と特定健康診査の結果を収集し、胃酸分泌抑制薬とレセプト喘息(病名、受診、処方パターンから定義)の新規発症との関連を、多変量ロジスティック回帰分析で検討した(n=9,888)ところ、プロトンポンプインヒビター(プロトンポンプ阻害薬)、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)ともレセプト喘息発症との有意な関連を認め、特にヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)は投与日数が長いほど、レセプト喘息発症が増えていた(1~59日:調整オッズ比=1.57、60日以上:調整オッズ比=2.18)(出典・参照:胃酸分泌抑制薬と喘息発症の関連)

とあり、胃酸分泌抑制薬の使用は喘息発症リスク因子となる可能性も示唆されているところでもあります。
胃酸分泌抑制薬の長期服用により、腸内細菌叢に影響する示唆や、また、胃酸分泌抑制薬は、食物アレルゲン感作のリスク因子となる可能性についての報告(参照:Dose-dependent food allergy induction against ovalbumin under acid-suppression: A murine food allergy model ほか)もなされています。
新たな薬剤であるカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)はプロトンポンプインヒビター(プロトンポンプ阻害薬)よりも腸内細菌叢を変化させる可能性についての示唆もありますが、胃酸分泌抑制薬とアレルギー疾患に関して今後も掲載していきたいと思います。

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