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肥満細胞症について② 10.3更新

2019.09.29

投稿者
クミタス

肥満細胞症においてはアナフィラキシー様症状が出現することがありますが
肥満細胞(マスト細胞)について
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2311
実際の症例として以下などが報告されています。

48歳男性において、胃腸炎症状の後に意識消失発作を認め、救急隊到着時収縮期血圧80mmHg台と低値であったことから、胃腸炎による脱水症状と判断し経過観察入院となった。入院後特に誘因のない腹痛、呼吸困難感、血圧低下、顔面紅潮を主徴候とする発作を日に1~2回認めた。アナフィラキシーショックに準じてアドレナリン、抗ヒスタミン薬の投与を行ったところ毎回短時間で症状は消失した。
10年前から体幹・四肢にびまん性に存在する小褐色斑を認めていたため肥満細胞症が疑われ、抗ヒスタミン薬の定時投与を開始したところ、発作を認めなくなった。皮疹の生検では真皮上層に肥満細胞の集簇を認め、肥満細胞症と診断された(出典:アナフィラキシー様症状を呈し、皮膚生検にて診断し得た成人肥満細胞症の 1 例)。

症状が皮膚に限られる皮膚肥満細胞症は、小児での発症が多く、また小児での発症例の報告もありますが主に成人にみられる全身性肥満細胞症には無痛性全身性肥満細胞症など複数の病型があり、皮膚肥満細胞症から全身性肥満細胞症に移行する例も見られています。

症状例については、肥満細胞(マスト細胞)について
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2311
にて掲載していますが、小児の症例として以下などがあります。
症例1 : 3ヵ月女児。生直後から背部、右大腿部に拇指頭大までのそう痒を伴う褐色斑および水疱が出現し、顔面、四肢にも同様の皮疹が拡大した。Darier(ダリエ)徴候は陽性であった。抗アレルギー薬の内服とmediumクラスのステロイド外用剤で加療。その後9ヵ月を経た現在、褐色斑の新生はなく個疹は消退傾向を示す。
症例2 : 1歳9ヵ月男児。生後7ヵ月頃より腹部にそう痒を伴う小指頭大までの褐色斑が出現した。体幹および四肢に拇指頭大までの褐色斑が孤立性に散在しており、Darier(ダリエ)徴候は陽性であった。Mediumクラスのステロイド外用剤のみで治療を行い、個疹は徐々に消退傾向を示す。
2例ともに真皮乳頭層を中心に明るい胞体を有した類円形の細胞が帯状に浸潤し、リンパ球や少数の好酸球を混じていた。トルイジンブルー染色にて、豊富な細胞質を有した浸潤細胞は細胞質内顆粒の異染性を示したことから、肥満細胞症と診断された。皮疹部組織を検体としたc-kit 遺伝子変異の検索では、症例2にのみ816番目のアミノ酸がアスパラギン酸(GAC)からバリン(GTC)への点突然変異を認めた(出典・参照:c-kit解析を行った小児肥満細胞症の2例)。

肥満細胞症の方(特に成人の方)においては、肥満細胞(マスト細胞)上に発現している幹細胞因子受容体c-kitをコードする遺伝子の活性化突然変異(D816V)が見られることが多く、全身性肥満細胞症の治療や予後は病型によっても異なりますが、肥満細胞症の治療には抗ヒスタミン剤、アナフィラキシー様症状にはアドレナリンなどが使用されます。進行性の全身性肥満細胞症の場合は、インターフェロンやコルチコステロイドなど、またEU加盟28カ国、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、アメリカでは、KIT D816Vを阻害するマルチターゲットプロテインキナーゼ阻害薬PKC412(ミドスタウリン)なども承認されています。
アナフィラキシー様症状が生じ、アレルゲンが特定できない場合は肥満細胞症が候補となる可能性もあり、慢性の皮診(褐色斑)がある場合は生検、検索をおこなうことで、肥満細胞症であるか判別し得ることもあります。KIT D816V阻害薬Blu-285(avapritinib) なども海外で試験がなされていますが、また情報をアップデートしていきたいと思います。

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