1. クミタス記事
  2. クミタス記事詳細

読み物

人気記事

インスリン製剤によるアレルギー

2019.10.07

投稿者
クミタス

インスリン自己注射を行う際には皮下組織に薬剤を到達させる必要があり、不適切な注射手技により皮下硬結が生じた場合には、インスリンの吸収の変化により血糖管理に悪影響を及ぼす可能性があります。インスリン注射部位に生じる皮膚・皮下組織の合併症には、皮下出血、インスリンアレルギー、insulin lipoatrophy、insulin lipohypertrophy、限局性アミロイド沈着などがあります。

インスリン注射を使用していて、製剤中の成分、添加物に感作し、注射部位の発赤、掻痒を繰り返すことがあります。

・インスリン注射の5-20分後に注射部位の発赤・掻痒
・インスリン製剤の変更を繰り返したが皮疹が続き、徐々に拡大
・アナフィラキシー例:意識消失し救急搬送。血圧低下、注射部位以外の発疹
・数種のインスリン製剤による皮内テストを施行した結果すべて陽性であったり、同様の症状が出現

ケース1
インスリンアスパルト (ノボラピッド®) とインスリンデテミル (レベミル®) の皮下注射が導入された約2週間後より、腹部のレベミル® 皮下注射部位に一致して、軽度の瘙痒を伴う浸潤性紅斑が生じた。数種類のインスリン製剤を1/100 濃度に希釈して皮内テストを施行したところ、レベミル® のみ 24時間後より浸潤性紅斑を認め、72時間後も持続した。続いて新たに使用したインスリングラルギン (ランタス®) によっても、投与翌日から注射部位に同様の浸潤性紅斑が生じた。

ケース2
特に誘引なくインスリンを皮下注射している下腹部より皮疹が出現した。皮疹が徐々に拡大し血糖の上昇も認めたため緊急入院となった。初診時、四肢、体幹に米粒大から大豆大の痒みを伴う浮腫性紅斑が一部癒合性に散在し、膿疱も伴っていた。ヒューマリンRを静注し、血糖コントロールを行うとともに、抗アレルギー剤の内服とステロイド剤外用にて皮疹は軽快した。インスリンアレルギーが疑われ、プリックテストではアピドラ、ランタスをはじめ各種インスリン製剤にて陽性を示し、陰性であったトレシーバも皮内テストで陽性を示した。プリックテストでの反応が比較的軽度であったノボラピッドの皮下注射を0.01単位から徐々に漸増し減感作療法を行った。引き続き持続皮下インスリン注入療法にて血糖コントロールを行ったところ経過良好であった。

ケース3
インスリン注射の5-10分後に注射部位の発赤・掻痒を認めインスリンに対する即時型アレルギーと診断された。インスリン製剤の変更を繰り返したが皮疹は徐々に拡大し入院精査を行った。インスリン治療歴と皮内注射試験、入院後の経過からインスリン製剤と製剤中の複数の添加物に対するアレルギーが疑われた。慢性心不全に伴うインスリン抵抗性と腎機能低下の合併があり、強化インスリン療法の適応と判断したが、いずれの持効型インスリンに対してもアレルギー反応を呈したため持続皮下インスリン注入療法(CSII)を導入した。CSII導入後は頻回注射に比べ少量のインスリン投与にて血糖コントロールは安定し、インスリン製剤に対する即時型アレルギーはCSII導入により改善した。

ケース4
バイアル製剤N注 (ヒューマリン®N注) によるインスリン治療が開始され、注射部位の発赤、掻痒が続くため、混合型カートリッジ製剤30R注 (ペンフィル®30R注) に変更され、その後症状は消失していた。血糖コントロール目的に入院となり、混合型カートリッジ製剤20R注 (ペンフィル®20R注) に変更され3年後、インスリン注射後に意識消失し、救急搬入された。来院時に血圧低下および腹部の発疹を認め、アナフィラキシーショックと考えられた。数種のインスリン製剤による皮内テストではすべて陽性で、インスリンアレルギーと診断された。経口血糖降下薬に変更したが血糖のコントロールができず、脱感作療法を施行。以降アレルギー反応は認めなくなった。

持効型溶解インスリンアナログ製剤(インスリングラルギン (ランタス®)、インスリンデテミル (レベミル®)など)は製剤特徴から浸潤性紅斑など注射部位に反応が出現しやすい面もありますが、インスリンの皮下注射はインスリンが長時間高濃度のままとどまり、多量体を形成することにより抗原性を発揮する可能性があるとの示唆もあります。そして持続皮下インスリン注入療法は、比較的アレルギーが出にくい場合もあり、また免疫療法にて症状改善が見込める場合もあります。
亜鉛やプロタミン硫酸塩などの添加物が原因の可能性が考えられている例もあり、複数製剤で共通して使用されている添加物も少なくありませんが、また他製剤についても情報をアップデートしていきたいと思います。

出典・参照:インスリンデテミル(レベミル®)およびインスリングラルギン(ランタス®)注射部位に浸潤性紅斑を呈した 1 例
インスリンアレルギーを呈した症例に減感作後、持続皮下インスリン注入療法により治療継続できた一例
インスリン製剤に対する即時型アレルギーに対して持続皮下インスリン注入療法(CSII)にて良好に治療し得た1例
アナフィラキシーショックをきたしたインスリンアレルギーの1例

    {genreName}

      {topics}