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家庭用殺虫剤による反応

2020.04.11

投稿者
クミタス

家庭用殺虫剤(医薬品及び医薬部外品)は、感染症の原因である病原体を運んだり、アレルギー疾患を引き起こすことにより、ヒトの健康を脅かす害虫として薬機法で定められた衛生害虫(ハエ、蚊、ゴキブリ、ノミ、トコジラミ(ナンキンムシ)、イエダニ、屋内塵性ダニ類(ヒョウヒダニ、コナダニ、シラミなど)を主に対象とし駆除する製品になります。

家庭用殺虫剤での使用頻度が高いピレスロイド系殺虫剤は、除虫菊(シロバナムシヨケギク)の花に含まれるピレトリン類と、化学構造的に類似した化合物を含みます。
ヒトなどの哺乳動物では、殺虫成分は分解酵素により代謝され尿などで短期間に体内から排出するとされますが、殺虫剤中の成分により中毒症状、アレルギー症状が出現する場合もあります。ピレスロイド系殺虫剤による中毒症状としては、軽症では全身倦怠感や筋攣縮、運動失調、中等度症では興奮、手足のふるえ、唾液分泌過多、重症では間代性痙攣、呼吸困難、失禁などが報告されており、大量使用により、また場合により通常の使用量レベルで症状出現することもあります。

65歳男性。居間床中央に3か月用カートリッジ交換後の電池式殺虫剤 (ピレスロイド系) を必要時に作動させていたが、腋窩に浮腫性紅斑が出現した。翌日未明に身体痛、1分間意識消失、下痢・脱糞のため、翌朝3時、救急搬送された。 各種検査で異常がなかったため一時帰宅したが、同室で朝6時過ぎに意識消失し、7時過ぎに再度救急部に搬送・入院した。同日16時、皮膚科診察時、全身に蕁麻疹様紅斑が出現し、手足の冷感と著明なチアノーゼと共に3回目の発作 (収縮期血圧 95 mmHg) が出現した。皮疹は初診の翌日に寛解し救急搬送時からの肝機能異常は著明に改善したが、CRPは一時的に4.76mg/dl上昇、入院4日で検査値もほぼ正常化し退院した(出典・参照:前田 学, 守屋 智枝, 高橋 智子, 脇田 賢治, 家庭用ピレスロイド殺虫剤が原因と考えられた意識消失発作と蕁麻疹様紅斑合併の男性例, 西日本皮膚科, 2014, 76 巻, 4 号, p. 330-334)。

78歳男性。室内で殺虫剤を大量に使用後、のどに違和感を感じるようになり、翌日症状が増悪して呼吸困難をきたした。近医受診中に咽喉頭浮腫によるチアノーゼと意識消失をきたし、緊急挿管されて別院に救急搬送された。ファイバー検査で咽喉頭に高度浮腫を認め、胸部CTで胸水と肺野の淡い濃度上昇を認めた。同日気管切開術を行い、メチルプレドニゾロンを3日間投与した。咽喉頭浮腫の消失までに1週間を要し、浮腫はアレルギーによる機序が考えられた(出典・参照:秋月 裕則1) 岩 英隆1) 武市 充生1)庄野 仁志1) 福田 靖2) ピレスロイドによる咽喉頭浮腫の1例 1)徳島赤十字病院 耳鼻咽喉科 2)徳島赤十字病院 救急部)。

咽頭浮腫においては、直接刺激が原因である場合もありますが、ピレトリンによる過敏性肺炎の報告では、アレルギーの機序を示した上で、キク科植物のブタクサへの感作がピレトリンに交差反応を起こす可能性も示唆されています。
換気の悪い場所で使用すると大量暴露が生じ得ることもありますので、使用の際には換気に心がけられるのが望ましいでしょう。

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