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喘息発作と混同されることのあるvocal cord dysfunction(VCD)

2021.05.24

投稿者
クミタス

vocal cord dysfunction(声帯機能異常。VCD)は、気管支の閉塞ではなく声帯が狭くなることで喘鳴が生じる病態を指し、喘息発作と間違いやすい面があります。vocal cord dysfunction(声帯機能異常。VCD)の約1/3の方で難治性喘息と診断されており、難治性喘息の方の約1/2においてvocal cord dysfunction(声帯機能異常。VCD)を合併しているとの示唆も見られていますが、喘息発作ではなくvocal cord dysfunction(声帯機能異常。VCD)の状態で呼吸困難を生じることは少なくないところでもあります。

喘息以外にも、アナフィラキシー、⾎管浮腫、喉頭蓋炎、副甲状腺機能低下症、喉頭気管⽀炎、声帯ポリープ、喉頭軟化症、気管狭窄症などとも近似の症状を示すことで鑑別が必要になることがありますが、運動誘発アナフィラキシーと診断され、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)が頻回に使用されていたVocal Cord Dysfunction(声帯機能異常。VCD)の方の例も見られています。

運動誘発アナフィラキシーと診断され、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)が頻回に使用されていた VCD の女子において、精査目的で運動負荷試験を実施したところ、喉頭絞扼感、吸気時喘鳴などの呼吸困難症状が出現したが、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)低下や陥没呼吸や呼吸音減弱はなく、これらの症状は治療として用いた薬剤に反応せず、喉頭内視鏡検査にて声帯奇異性運動を認め VCD と診断された。呼吸困難の状態を心拍数、SpO2、呼吸数、喉頭内視鏡検査所見にて患者さん自身が正しく認識し、さらに腹式呼吸を含む対処法を実践、呼吸困難の症状を制御するバイオフィードバック療法が行われ、呼吸器症状出現時は上記を実践しアドレナリン自己注射薬の使用がなくなった(出典・参照:寺西 宏美, 古賀 健史, 植田 穣, 清水 貴寛, 岡田 慶介, 小川 俊一, 盛田 英司, 板澤 寿子, 徳山 研一, アナフィラキシーと診断され,アドレナリン自己注射薬(エピペン®)を頻回使用していたVocal Cord Dysfunctionの1例, アレルギー, 2021, 70 巻, 3 号, p. 210-214)。

Vocal Cord Dysfunction(声帯機能異常。VCD)の誘発因子として、気道刺激(粉塵・煙・ガス・気化物質などの吸入、上気道炎、胃酸逆流症)、運動、誤嚥、心因性の原因、副鼻腔炎などが挙げられていますが、気道を刺激する物質の吸入を減らす、不安・ストレスの軽減対策、副鼻腔炎といった影響可能性のある基礎疾患の治療などが有用となることもあります。対処については、また改めて掲載したいと思います。

心因性咳嗽~心的要因からの咳
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/3949

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