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好酸球性胃腸炎~経口免疫療法施行により判明したケース

2020.03.29

投稿者
クミタス

経口免疫療法は、自然経過では早期に耐性獲得が期待できない症例に対し、事前の食物経口負荷試験で症状誘発閾値を確認した後、原因食物を経口摂取し、閾値上昇、脱感作状態としたうえで、耐性獲得を目指す治療法ですが、経口免疫療法を実施により腹痛、下痢、嘔吐症状が出現し、好酸球性胃腸炎の発症が発覚することがあります。

6歳男児。食物経口負荷試験により即時型食物アレルギーと診断され、経口免疫療法(卵、乳、小麦)を継続していた。4歳4か月より好酸球数、総IgE、各特異的IgE値の急激な上昇が認められ、4歳10か月頃より口腔粘膜症状や嘔吐が出現し徐々に増悪した。卵や乳の維持量を減量・中止し症状は軽快したが、嘔吐は時折認めていた。5歳10か月頃から砂利やスポンジを食べる異食症状が出現し、下痢や血便を伴わない著明な鉄欠乏性貧血を認め精査入院。上下部内視鏡検査では明らかな消化管出血を認めず、胃幽門部と胃体部に40個/HPF以上の好酸球浸潤が認められ好酸球性胃腸炎と診断された。その後、多種食物除去療法により消化器症状は消失した。

9歳男児。鶏卵アレルギーに対する急速経口免疫療法を行い、治療開始22日目に加熱鶏卵1個に到達し、23日目に退院した。加熱鶏卵1個を維持量としたが、退院同日より鶏卵摂取後の腹痛・嘔吐を認めた。末梢血白血球分画で好酸球の著明な増加を認めたため、維持量を減らして経過をみた。しかし嘔吐による体重減少が出現したため、第38病日に鶏卵摂取をすべて中止した。第45病日に上部消化管内視鏡下粘膜生検を行い、好酸球の浸潤を確認し、好酸球性食道・胃腸炎と診断された。

食物摂取後の消化器症状においては、IgE依存性のアレルギー反応以外に、食道、胃腸粘膜内などに浸潤した好酸球性炎症である場合もあります。腹痛、下痢、嘔吐、体重減少といった症状があり、胃、小腸、大腸の生検で粘膜内に好酸球主体の炎症細胞浸潤または腹水が存在し腹水中に多数の好酸球が存在する、採血検査で好酸球増多がある場合などは好酸球性胃腸炎である可能性も想定できるのが望ましいでしょう。


出典・参照:西村 幸士, 福家 辰樹, 宮地 裕美子, 犬塚 祐介, 豊国 賢治, 苛原 誠, 石川 史, 佐藤 未織, 齋藤 麻耶子, 山本 貴和子, 成田 雅美, 野村 伊知郎, 大矢 幸弘, 経口免疫療法中に異食症により発見された好酸球性胃腸炎の1例, アレルギー, 2020, 69 巻, 2 号, p. 123-128
岡本 義久, 栗原 和幸, 鶏卵アレルギーに対する急速経口免疫療法によって発症したと考えられた好酸球性食道―胃腸炎の1例, アレルギー, 2015, 64 巻, 1 号, p. 57-62

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