1. クミタス記事
  2. クミタス記事詳細

読み物

絹製品による反応

2021.09.28

投稿者
クミタス

繭から引き出された繭糸を構成するのはフィブロイン(fibrorin)、セリシン(Sericin)になりフィブロイン、セリシンはタンパク質で、セリシンの内側にフィブロインが位置しています。絹糸の製造において外側のセリシンは不純物や糊分とともに溶解し除去されるなどの精練という工程を経ていますが、セリシンをすべて除かれるための作業がおこなわれた絹糸以外にも、除く程度により三分練り(三分精練し七分のセリシンを残す)、五分練り、七分練り、八分練りなどセリシンが残留している絹糸である場合もあります。 

31歳女性。29歳時から絹製着物の着用時や着付け時に全身性蕁麻疹、顔面膨張、くしゃみ、咳、呼吸苦を生じた。
絹特異的IgEはクラス2、皮膚プリックテストで絹と絹糸・絹布抽出液、セリシン溶解液で陽性を示し、無染色の絹布を用いたパッチテストでも陽性となった。

6歳男児。既往歴に蕁麻疹あり、4歳時、絹製着物の着付け30分後に顔面の紅斑が出現、抗ヒスタミン剤を内服したが約2日間症状が継続した。1か月後、抗ヒスタミン剤内服後に同じ着物を着用時には症状は出現しなかった。さらに1か月後、布団屋に行き絹製の布団に顔を付けた直後に顔面の紅斑、腫脹が出現し、絹製品との接触を避けていたが、絹製の座布団に座り掻痒感と顔面の紅斑が出現した。絹による即時型アレルギーもしくは遅延型アレルギーが凝われ、血清では絹特異的IgE陰性、持参の着物、繭玉を使用してプリックテストで絹、繭玉に陽性、パッチテストで繭玉に陽性反応を示した。

養蚕業の方で呼吸器症状や皮膚症状が出現することがありますが、養蚕業の方でなくても絹製品に触れて症状出現する場合もあります。着物着用後などで違和感がある場合は、絹が原因となっている可能性も視野に入れられると良いかもしれません。

出典・参照: 守屋真希 (横浜市大 病院 皮膚科) ,  猪又直子 (横浜市大 病院 皮膚科) ,  中河原玲子 (横浜市大 病院 皮膚科) ,  池澤善郎 (横浜市大 病院 皮膚科) 着付け師に生じた,絹による職業性接触蕁麻疹症候群の1例:セリシンとフィブロインによる感作
井岡奈津江 丸山彩乃 峠岡理沙 益田浩司 加藤則人 京都府立医科大学皮膚科 絹による即時型および遅延型アレルギーの1例

    {genreName}

      {topics}