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症状が軽減したようにみえた後、長時間を経て増悪した例から

2022.07.06

投稿者
クミタス

食物や内服薬によるアレルギー、アナフィラキシーの場合、原因の食物や内服薬の成分が消化管内にとどまっている間に、アレルギー症状、アナフィラキシーが持続する可能性がありますが、今回は、何らかの理由でアレルゲンの消化管からの吸収が遅延し、原因食物の摂取から5、6時間後に強い皮膚症状が出現し、いったん軽減しかけて長時間(約24時間以上)を経て再び増悪し、それから短時間のうちにショック状態となった例を掲載します。

アレルギー歴のない2歳女児(家族歴:両親は特記なし。弟は食物アレルギーあり)。
病歴① 旅行先で初めてカニを摂取した6時間後、上下肢が著明に腫脹し全身に紅斑が出現したが、増悪がなかったため、旅行先から帰って急患センターを受診した(摂取24時間後)。受診当時は上記症状が軽快ぎみであったため帰宅となったが、帰宅数時間後に症状が再燃したため近隣総合病院へ入院となった(摂取約36時間後)。入院時:全身状態不良、不機嫌、意識状態変化なし、血圧低下なし、顔面を含む全身に膨隆疹。入院時検査所見:一般生化学検査、一般末梢血検査、好酸球数、肝機能、腎機能正常。
入院後、皮膚所見はしだいに増悪、半日後には咳嗽が強くなり SpO2 92%まで低下し呼吸不全を呈した。右下肺野にすりガラス様陰影も出現していたため、ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン30mg/kg/日)を開始し、数時間後には皮膚紅斑・膨隆疹は1/3程度に軽減し呼吸不全も回復。3日間投与終了時点ですべての症状は消失した。
食歴・検査結果から原因食物はカニと診断され、カニおよびエビの完全除去が指導された。

病歴② 病歴①の女児にて診断から3週後、配膳を別にするよう依頼していたが、園給食でカニ成分(カニカマ)を誤食(0.8%のカニエキスが含有)。摂取6時間後に腹部から上下肢に蕁麻疹が出現し家庭にて常備薬の抗ヒスタミン薬・ステロイドを内服したが、完全には消失せず翌朝来院。受診時(摂取20時間後)は軽快傾向で、他のアレルギー症状もみられないため帰宅したが、夜間にかけ蕁麻疹の消退を繰り返し、夜間急患センターを受診(摂取32時間後)。蕁麻疹の他はアレルギー症状がみられず帰宅となったが、翌朝にかけ全身に蕁麻疹が拡大し紅斑様~四肢の浮腫がみられ、尿量低下が認められたため再来。診察中(摂取44時間後)、急速に顔面蒼白・喘鳴が出現、収縮期血圧が80mmHgまで低下、意識消失し、アドレナリン投与ほか緊急処置を行い、約10分後には呼吸状態、血圧、意識とも回復し観察入院となった。入院後も顔面・四肢の浮腫は続き尿量の回復も遅れていたため、抗ヒスタミン薬・ステロイドの投与およびモニター管理とし、観察も含め入院は9日を要した(出典・参照:遅発性に発症し、長時間を経て2峰性反応を示しアナフィラキシーショックへと進行したカニアレルギーの1例)

原因物質の摂取から44〜48時間といった長時間を経て、アナフィラキシーショックを生じる場合があり、上記例においてはアレルゲンの消化管からの吸収が遅延し、長時間経過後にマスト細胞からの脱顆粒が始まり、脱顆粒がきわめて長く持続する間に2峰性(ピークが2度)となり、最終的に強い脱顆粒によりショックに至ったのでは、と推測されています。上記病歴①②でほぼ同じ時間周期でアレルギー症状の増減を繰り返している点も挙げられており、今後その理由やメカニズムについての示唆などもアップデートしていきたいと思います。

二相性反応について
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/2218
食物アレルギー~摂食後数時間を経て症状出現する場合
https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/3940

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