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長期間にわたる過剰な温熱製品の使用と皮膚症状

2022.09.16

投稿者
クミタス

高温の蒸気などの気体や液体、固体に触れると短時間でやけどを生じますが、湯たんぽやカイロといった比較的低い温度(40~55℃前後)の刺激を長時間に度り皮膚が受けて、痛み、水疱、皮膚の変色等の症状が見られることのある低温やけどを生じることがあります。皮膚が薄い年齢の子どもや高齢者で生じやすい傾向もありますが、成人でも就寝中などに進行し、気が付いた頃に皮膚の深部にまで損傷が及んでいる場合もあります。
また、皮膚の同じ部位に長期時間、繰り返し温熱に当たることで、紅斑が見られることもあり、温熱性紅斑と呼ばれます。温熱刺激を受けた部位の血管が拡張して充血し、メラニンや赤血球由来の色素であるヘモジデリンによる色素沈着が起こることが原因と見られており、電気ストーブや、電気コタツ、カイロなどにより引き起こされることがあります。温熱性紅斑は長期間くり返すと、まれに皮膚がんを生じるとの示唆もなされています。

80歳男性。S状結腸過長症で腸切除を施行した後、慢性便秘となり、46年間連日腹部にカイロを貼付していた。当初カイロ貼付部に紅斑が出現していたが、次第に持続性の紅褐色斑となり、1年前より同部位に結節が出現したため受診。初診時、腹部の両側に手掌大で一部に網状構造を呈する萎縮性の黒褐色斑があり周囲に淡紅褐色斑を認めた。右腹部の黒褐色斑内には紅色局面があり、表面顆粒状の紅色結節を伴っていた。病理組織所見では、結節部で異型性の強い表皮細胞の腫瘍性増殖がみられ、結節部周囲の紅色局面は光線角化症様の所見を呈しており、結節部は有棘細胞癌、紅色局面はthermal keratosisと診断された。紅色局面は全摘され、術後15か月の現在再発はない、とのこと(出典・参照:伊藤まどか 福屋泰子 鈴木瑞穂 石黒直子 東京女子医科大学皮膚科学教室 カイロの長期貼付による温熱性紅斑から有棘細胞癌を生じた1例)。

暖房器具からの温熱、温風が皮膚に当たるまでの距離が近い場合は、距離を取るようにする、暖房器具の位置をこまめに変えたり、同じ部位にカイロを貼り続けないようにして同じ部位に温熱が長期間当たり続けないようにするなど、適した使用を心掛け、温熱性紅斑の慢性化を防ぐようにできるのが望ましいでしょう。

参考:カイロの正しい使い方
https://www.kobayashi.co.jp/brand/all-about-hand-warmer/use.html

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